資料館生薬データベース

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生薬名

入手時名称MNOSIILA 雄黄
正式名称雄黄
日本語読みゆうおう, Yūō
現地読みXionghuang
ラテン名Realgar (CP)
英語名Realgar (CP)
原植物名AsS, 硫化砒素鉱
薬用部位分類鉱物性生薬
細分類鉱物
TMPW No15760

学術情報データベース

一般生薬名雄黄, Xionghuang, Realgar (CP2020), Realgar (CP2020)
生薬異名雌雄精(Cixiongjing), 鶏冠石(Jiguanshi), 石黄(Shihuang
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原植物名硫化砒素鉱 Realgar AsS
薬用部位鉱物
公定書薬典(2020)
臨床応用一般に殺虫,殺菌,解毒薬として,疥癬,瘡腫,虫蛇咬傷などに外用し,また寄生虫による腹痛,偏頭痛,小児諸癇,泄痢などに応用する.
医学体系中国医学
伝統医学的薬効分類外用薬
薬効[性味] 辛,温;有毒.
[帰経] 肝、大腸経.
[効能] 解毒殺虫,燥湿去痰,截瘧.
[主治] 癰腫疔瘡,蛇虫咬傷,虫積腹痛,驚癇,瘧疾に用いる.
成分情報その他 Others
(*C1):
AsS, 重金属塩

薬理作用1/2濃度水浸剤は,雄黄同様各種皮膚真菌に対し抑制作用がある.その1/100濃度においてヒト結核菌に対し生長抑制作用がある.
適応症疥癬, 蛇虫咬傷, 腸内寄生虫, 腹痛, 頭痛
方剤希有処方に配合
広恵済急方(日本古典) 

Tips!

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-7. 入井悶冒
: 古い室に入り悪気にあたり倒れる
【疾患注釈】春夏の際(あいだ)或は夏秋の間、むろふるいの中皆陰毒の気あり、又山中の深谷の間或は金銀銅坑の中、往々震気(わるいいき)蒸騰(むしのぼ)す、若(もし)人此気に中(あた)るときは、悶絶する事あり、久(ひさしく)不省(さめざる)を救わざれば死す
【用法】先(まず)冷水を取て、其面にふきかけ次に雄黄末を一二匁冷水に匂(かきまぜ)のませてよし <上巻30丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-9. 恐怖卒死
: 物に驚いて目を回す
凡人夕暮れ又は夜中厠にいき、或は郊野へ出て、或は空冷屋室に遊び、又はしらざる所の地に行き、ふと異形のものを見て口鼻の内へ邪悪の気を吸い入れ、たちまち地に倒れ、手脚冷え上がり、両手を握り、面の色青黒く、或は口鼻より清血を流すことあり 
【疾患注釈】凡(おおよそ)卒(にわか)に倒れて無性に成し病人は、聲を立ることなき者なり、惟小児の驚風並に大人の癲癇驚怖(てんかんものおどろき)して気絶するとの三証は、叫聲(わっとこえ)をあぐる也 是を其証拠
【用法】雄黄汁(しょうがのしぼりじる)醇酒(こいさけ)等分に攪(かきま)ぜ煎じ沸(わかす)こと数度にして飲しむべし <上巻34丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-11. 疔毒昏憒
: 疔の毒により気を失う
【疾患注釈】凡人平居無事にして、暴(にわか)に死る者あり、何故なる事をしるべからざるは、撚紙(こより)に火を點(とも)し死人の遍身(そうみ)を見るべし、若(もし)小瘡(ちいさいできもの)あらば、是疔毒内に入たるなり 面部等の顯(あらわれ)たる所に生たるは、見易き故に知易し、身體手脚(からだてあし)の隠たる所に生じたるは見えがたきゆえ知かたし、故に往々見誤る事あり、又は初発に憎寒壮(さむけつよく)熱ありて、傷寒と會(こころえ)て療理し、救わざるに至る物あり、此証急に救わざれば半日に死す、死て後其屍(そのしかばね)に紫黒の点あるべし、疔毒なり、故に此証緩(ゆるやか)にすべからず 
【用法】先小瘡の上に灸すべし (疔瘡妄(みだり)に灸すべからず 然れども昏かいたるものは灸するをよしとす) 甦て後に雄黄一味末となし酒にて服すべし、麝香少し許を入最よしとす <上巻50丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-10. 諸蟲咬傷
: 諸々の虫に刺される/咬まれる
蝮蛇囓傷: 蝮蛇に咬傷(かみやぶら)れる
【用法】
・ 爐(いろり)中、或は竈の中の灰塊を熱湯の内に入れ和匂(まぜあわせ)、再火の上にかけて三四度沸、其湯の内へ傷の處(ところ)を漬(ひた)すべし、初は熱きを覺(おぼえ)ざるべし、漸(ようやく)に熱きを覺えば最早(もはや)毒浅くなりたる也、何れにも堪かぬるに至て止べし、次に雄黄五霊脂を末となし、馬齒莧の絞汁にてとき、瘡口(きずぐち)の處(ところ)を除(よけ)て四圍(ぐるり)に塗て、上を裹置(つつみおく)ベし <中巻77丁>
・ 服薬は五霊脂雄黄等分末となし、温湯(ぬるまゆ)又は酒にて服すべし 総じて、何れの薬を用いたるにも、後にて酒を醉うほど飲べし、凡山野を経歴する人は、右の薬を購(ととのえ)て帯行(もしゆく)べし、、若右の二薬なくは馬齒莧を茎葉ともに搗て絞汁を三盃ほど飲べし、亦妙也 <中巻77丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-10. 諸蟲咬傷
: 諸々の虫に刺される/咬まれる
 └ 蟲咬:蟲(何の虫かわからない)に咬傷れる
【用法】
・ 腫痛(はれいたむ)は、汁(しょうがのしぼりじる)にて其處を洗い、後に明礬雄黄の末を貼(つけ)てよし
青黛雄黄の末、水に調塗(まぜぬり)てよし <中巻80丁>

5. 諸物入九竅: 諸物が身体の竅に入る類
└ 5-6. 蛇入人耳口鼻肛門亦婦人陰門
: 蛇が人体の九窮に入る
【疾患注釈】蛇の窮(あな)に入たる
【用法】蛇出て後、雄黄末を人参の煎じ汁にて吹くべし、又雄黄の末、酒にて服するもよし <下巻33丁>

10. 小児急証: 小児の急病
└ 10-7. 驚風
: 新生児のひきつけ
 └ 急驚風: 牙歯をくひしめ、竄視(うえをみつめ)、手足搐搦(びくつき)、或は反張(そりかえり)、或は壮熱(ねつつよく)、或は熱なくて此の証を発する者あり、且大抵此証を発するときは、わっと叫ぶ聲をあげて目を引きつくる者あり、しかしながら初めより壮熱(ねつつよく)ありてうとうと昏睡(ねむり)、聲をあげずに惟(ただ)手足搐搦(びくびく)して、後に引きつくるもあり、此を急驚風というなり 
【用法】鶏冠雄黄等分を加え、亦良 <下巻90丁>

10. 小児急証: 小児の急病
└ 10-8. 走馬牙疳
: 歯茎がただれ、歯が落ちる
【疾患注釈】齒齦(はぐき)損爛(くずれただれ)、或は腫紫黒色(くろむらさきいろ)に成、齒縫(はのはえぎわ)より鮮血出、口内臭気あり、毒深(つよき)は臭気も亦つよし 身に熱あり、甚しきは齒落、唇鼻顋(えら)頬までも攻蝕(かけとれ)て脱去(おちる)に至る、遅ときは死に至る 
おおよそ疱瘡麻疹(ほうそうはしか)、或は熱病時毒等患いたる後、息臭、口中臭気あるは、其毒消鮮せさるなれば早く良醫(よきいしゃ)を迎(よび)て療理を請べし、延握(のびのびに)すれば此病となる、可恐(おそるべし) 
【用法】麝香黄檗青黛雄黄、末となし、ふりかくべし、若し患處(あしきところ)、既蝕損死肌(もはやかけくされ、しにく)有、綿を筋様の物の端へ纏、薬をひたして、蝕損(かけ)たる死肉へ擦却(すりつけ)て、且軟帛(やわらかいわた)にて悪血を拭去りて、右の薬をふりかけべし、此薬を用て効(しるし)なきは、定粉(女子の用いる「おしろい」なり、薬店にては「唐土(とうのつち)」と云う)半両を加え、同じく研りて用ゆべし、用様は前の方と同じ <下巻94丁>
関連情報新訂和漢薬
同類生薬雌黄:三硫化砒素鉱 Orpiment, As2S3
参考文献CP2020: 中華人民共和国薬典 (2020年版) .
C1) 和漢薬百科図鑑 Vol. II, pp 373-375.
L1) 官準 広恵済急方.
L2) 近世歴史資料集成第2期 (第9巻) 民間治療(2).
L3) 新訂 和漢薬.
備考中国市場では雄黄(蘇維黄;通常品),明雄(腰黄,雄黄精;品質佳),刁黄(加工品)に分けている.なお香港市場の雌黄精と称するものは AsS で本来雄黄と称すべきであった.また江戸時代に中国から輸入された古渡鶏冠雄黄と称するものは AsS および As2S2 であり,共に雄黄であるが結晶構造の差異がみられた.砒素化合物のため現在では薬としての使用を禁止されている.
更新日2022/02/01