資料館生薬データベース

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生薬名

入手時名称巴豆
正式名称巴豆
日本語読みはず, Hazu
ラテン名Crotonis Fructus (CP), Crotonis Semen (Tiglium)
英語名Croton Fruit (CP), Croton Seed
原植物名Croton tiglium L., ハズ
原植物科名Euphorbiaceae, トウダイグサ科
薬用部位分類植物性生薬
細分類種子
TMPW No1941

学術情報データベース

一般生薬名巴豆, Badou, Crotonis Fructus (CP2020), Crotonis Semen, Croton Fruit (CP2020), Croton Seed
生薬画像
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原植物名Croton tiglium Linn., ハズ
原植物科名Euphorbiaceae, トウダイグサ科
薬用部位種子
選品辛烈な味があり,油分の多い,重くて新しいものが良い.水に浮かぶものは悪い(NI).
公定書薬典(2020)
臨床応用峻下薬,吐薬.通常丸剤,乳剤として使用する.生理作用が強烈であるので使用上細心の注意が必要である.巴豆油は皮膚刺激薬として軟膏にし凍傷予防に用いる.
医学体系中国医学
伝統医学的薬効分類瀉下薬
薬効[性味] 辛,熱;有大毒.
[帰経] 胃、大腸経.
[効能] 蝕瘡に外用する.
[主治] 悪瘡疥癬,疣痣に用いる.
成分情報脂肪酸関連化合物 Fatty acids related compounds
(*C1):
Croton resin, Oleic acid, Linolic acid, Arachic acid, Stearic acid, Palmitic acid, Lauric acidのglycerides, Tiglic acid, Crotonic acid

ジテルペノイド Diterpenoids
(*C1):
Phorbolを基礎アルコールとしたtiglic, lactic, acetic, formic acidsのエステル
(*C2, C3):
12-O-Acetylphorbol 13-decanoate
12-O-Decanoylphorbol 13-(2-methylbutyrate)
12-O-Tetradecanoylphorbol 13-acetate (TPA), 他9種類/ and other 9 types

その他の含窒素化合物 Other nitrogen containing compounds
(*C1):
Crotin, Croton-albumin

成分 構造式

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薬理作用峻下作用 (phorbol エステル).
HIV-Iウイルスによる細胞変性の抑制作用,プロテインキナーゼCの活性化(発癌活性)(C2, C3).
証類本草(中国古典)※画像をクリックすると本文の画像が表示されます  訳文画像を表示
適応症腹痛, 腹満, 便秘, 四肢の冷え, 腹が冷えて痛む, 意識障害, 腹水, 尿量減少, 胸が苦しい, 多汗, 痰づまり, 皮膚化膿症
方剤桔梗白散
広恵済急方(日本古典) 

Tips!

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-1. 中風
: 気を失い半身・手脚きかず、目・口ゆがむ病態 閉証(実証)と脱証(虚証)の二証がある 
 └ 閉証(実証)病状: 卒に倒れ、気を失い、人をしらず、歯を食いしめ、拳を握り、痰を吐くように喘息し、眼口歪み、半身不随、眼を見つめ、或は上目遣いでいるのは中風の閉証である
【疾患注釈】開口噤薫方: くいしめたる齒を開く薫(ふすべくすり)
【用法】巴豆を研(すり)に爛(もみたる)紙に包壓(おしつけ)て油を其紙にうつし取て、此紙にて撚(こより)を作り火を点(ともし)て吹滅(ふきけし)、其烟(けむり)病人の鼻の中又は口中へ入、薫(くすべ)て涎を多く出すべし <上巻6丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-10.霍乱
: 驕(この)病乾湿の二つあり、湿霍乱は吐瀉(はきくだ)して腹痛甚しきなり、乾霍乱は吐もせず瀉(くだし)もせず惟(ただ)心腹纒続大(むねはらしぼるごとくいたみ)に苦悶(くるしむ)を言なり 何れも危急なる証にて種々の変化一條に載がたし、療法も亦変化あり 
 └ 乾霍乱: 忽然(たちまち)心下(むなさき)つかえかたく腹肚(はら)はりしぼるように痛堪がたく漸々に煩躁擾亂(もがきさわぎ)、吐んとして吐ず、瀉(くだ)さんとして瀉さず、手足逆冷(ひえあがり)冷汗出、胸膈(むね)かたく起(おこ)りふさがり、頃刻(しばらくのうち)に命危証なり 
【疾患注釈】痛強く死なんとする
【用法】巴豆皮を去、少炒り、研爛(すりつぶし)、唐大黄乾姜の末各一匁蜜にまぜ、大豆許を三四つほど煖湯(さゆ)にて用ゆべし、暫して吐下ありて癒ゆ <上巻49丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-3. 歯衂舌衂
: 歯より血出るなり、舌より血出るなり
 └ 舌衂: 舌より血出て縷(いとすじ)のごとくなるなり 
【用法】巴豆を研爛(すりつぶし)て紙に壓碾(おしきし)り、油を取、其紙にて撚子(こより)を通理、燈(ともしび)付けて吹滅(ふきけし)、其烟にて舌の上下を薫(くす)ぶべし、自然と止なり <中巻21丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-6. 急喉痺(きゅうこうひ)
: 突然咽喉部が腫れ塞がる
【疾患注釈】暴(にわか)に咽喉腫痛て閉塞、水漿(のみもの)通らず、言語(ものいうこと)ならず、或は牙關(はをくいつめ)、噤急(ひらかざる)、是なり、早く理療せざれは死す 
【用法】
巴豆の油の附たる撚子(こより)紙に火を付、吹滅(けし)て、其烟にて病人の鼻を薫(くすぶる)こと一時許にして、口鼻より涎を流し、牙關(つぐみたるきば)自(おのずから)ひらくべし <中巻26丁>
・ 喉俄に腫塞りて危殆(あやうき)に至は、巴豆一粒皮殻を碎去(くだきすて)、針を以て糸を右の巴豆につけ、病人にせしむべし、巴豆咽に入を覺(おぼえ)ば、急に糸を牽(ひき)て出す、如是する時は塞腫といえども、咽通ざるには至らざるべし <中巻26丁>
関連情報新訂和漢薬
参考文献CP2020: 中華人民共和国薬典 (2020年版) .
C1) 和漢薬百科図鑑 Vol. I, pp 194-195.
C2) Chem. Pharm. Bull., 47, 1346-1347 (1999). [PMID: 10517016]
C3) Phytochem., 53, 457-464 (2000). [PMID: 10731023]
L1) 官準 広恵済急方
L2) 近世歴史資料集成第2期 (第9巻) 民間治療(2)
L3) 新訂 和漢薬
備考通常,果実で輸入される.『中華人民共和国薬典』ではハズの成熟果実が規定される.
作用は極めて激しく副作用として腸出血をともなう.近年,巴豆のメタノールエキスから,HIV-Iウイルスによる細胞変性を抑制する成分が見い出されている (C2, C3).
更新日2021/09/28