資料館生薬データベース

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生薬名

入手時名称甘草
正式名称甘草
日本語読みかんぞう, Kanzō
現地読みлакрица (lakritsa)
ラテン名Glycyrrhizae Radix (JP), Glycyrrhizae Radix et Rhizoma (CP)
英語名Glycyrrhiza (JP), Liquorice Root (CP)
薬用部位分類植物性生薬
細分類根+走出茎
産地情報キルギス共和国
入手先情報日本(ToS), 大阪府, ㈱栃本天海堂(試供品)
入手年月日2020/02/06
蒐集者小松かつ子
TMPW No30363

首都、省都または行政区域代表地点(都道府県庁所在地など)を表示しています。  
産地情報
キルギス共和国
https://ethmed.toyama-wakan.net/img/pin_san.png
34.6937249
135.5022535
入手先情報
日本(ToS),大阪府
https://ethmed.toyama-wakan.net/img/pin_nyu.png

学術情報データベース

一般生薬名甘草, Gancao, Glycyrrhizae Radix (JP18), Glycyrrhizae Radix et Rhizoma (CP2020), Glycyrrhiza (JP18), Liquorice Root (CP2020)
生薬異名東北甘草,西北甘草
生薬画像
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原植物名Glycyrrhiza uralensis Fischer1, Glycyrrhiza glabra Linn.2, ウラルカンゾウ1,ナンキンカンゾウ2
原植物画像
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原植物科名Leguminosae, マメ科
薬用部位根及びストロン
選品太くて質が充実し,内部が鮮黄色で,甘味の強いものが良品である(TN).
公定書日局18,薬典(2020)
臨床応用緩和,鎮痛,鎮咳,去痰,解毒薬として,腹痛,筋肉痛,痙攣痛,咽喉痛,リウマチ,関節炎,アレルギー,消化器性潰瘍,アジソン氏病などに応用する.グリチルリチン製造原料.嬌味原料とされる.
医学体系中国医学
伝統医学的薬効分類補気薬
薬効[性味] 甘,平.
[性味] 甘,平.
[帰経] 心、肺、脾、胃経.
[効能] 補脾益気,清熱解毒,去痰止咳,緩急止痛,諸薬調和.
[主治] 脾胃虚弱,倦怠乏力,心悸気短,咳嗽痰多,腹(胃)部と四肢の攣急疼痛,癰腫瘡毒,薬物の毒性と烈性の緩解に用いる.
成分情報トリテルペノイド Triterpenoids
G. glabra (*C10):
Carbenoxolone

トリテルペン系サポニン Triterpenoid saponins
(*C1):
Glycyrrhizin (Glycyrrhizic acid)(4-12%), 23-Hydroxyglycyrrhetic acid, 24-Hydroxyglycyrrhetic acid, 11-Deoxyglycyrrhetic acid, 24-Hydroxy-11-deoxyglycyrrhetic acid, Uralenic acid, Glycyrretol, Liquiritic acid, Glabric acid, Glabrolide, Deoxyglabrolide, Isoglabrolide, 21alpha-Hydroxyisoglabrolide, Liquiridioic acid, Liquoric acid
G. glabra (*C3-C10):
Glycyrrhizin, 以下代謝物 (the following compounds are metabolites.)
18beta-Glycyrrhetic acid, 18alpha-Glycyrrhetic acid, 3-Epi-18beta-glycyrrhetic acid, 3-Dehydro-18beta-glycyrrhetic acid, 3-Dehydro-18alpha-glycyrrhetic acid, 3-Keto-18beta-glycyrrhetic acid, 3-Keto-18alpha-glycyrrhetic acid, 3alpha-Hydroxyglycyrrhetic acid, 3alpha-Hydroxy-18alpha-glycyrrhetic acid, 3beta-Hydroxyglycyrrhetic acid, 3-Oxo-18beta-glycyrrhetic acid, 22alpha-Hydroxy-18beta-glycyrrhetic acid, 24-Hydroxy-18beta-glycyrrhetic acid, 22alpha-Hydroxy-3-oxo-18beta-glycyrrhetic acid, 24-Hydroxy-3-oxo-18beta-glycyrrhetic acid, 22alpha-Hydroxy-3-epi-18beta-Glycyrrhetic acid, 24-Hydroxy-3-epi-18beta-Glycyrrhetic acid, 3-O-Acetyl-22alpha-hydroxyglycyrrhetic acid

フラボノイド Flavonoids
(*C2):
Licoflavone A, Kumatakenin

フラバノンとジヒドロフラボノール Flavanones & Dihydroflavonols
(*C1):
Liquiritin, Liquiritigenin
G. glabra (*C1):
Neoliquiritin, Rhamnoliquiritin

イソフラボン Isoflavones
(*C1):
Formononetin, Licoricone, 2-methyl-7-hydroxyisoflavone
(*C2):
Glabrone

カルコン、ジヒドロカルコン及びオーロン Chalcones, Dihydrochalcones & Aurones
(*C1):
Isoliquiritin, Isoliquiritigenin
G. glabra (*C1):
Neoisoliquiritin, Licuraside, Rhamnoisoliquiritin
(*C2):
Licochalcone A, Licochalcone B

クマリン類 Coumarins
(*C1):
Glycyrol, Isoglycyrol
(*C2):
Glycyrin

その他の芳香族誘導体 Other aromatic derivatives
(*C2):
Licoricidin, Glabrene

成分 構造式






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薬理作用消化器性潰瘍抑制,胃液分泌抑制,鎮痙,鎮咳,副腎皮質ホルモン様作用(エキス).抗炎症,抗アレルギー作用(glycyrrhizin).
DNA配列AB012125, AB012126, AB012127, AB012128, AB012129, AB032424, AF124238; 伝統医薬データベース.
証類本草(中国古典)※画像をクリックすると本文の画像が表示されます  訳文画像を表示
適応症咽喉の腫脹疼痛, 咳嗽, 動悸, 食欲不振, 皮膚化膿症, 胃潰瘍
方剤阿膠附子湯, 安産湯, 安中散, 医王湯, 葦茎合四順湯, 異功散, 胃苓湯, 茵蔯四逆湯, 烏頭湯, 烏頭桂枝湯, 烏薬順気散, 烏苓通気湯, 温経湯, 温胆湯, 温脾湯, 益気養栄湯, 越婢湯, 越婢加朮湯, 越婢加半夏湯, 黄耆建中湯, 黄耆別甲湯, 黄芩湯, 黄芩加半夏生姜湯, 黄土湯, 黄連湯, 黄連消毒飲, 乙字湯, 解急蜀椒湯, 華蓋散, 香川解毒剤, 加減胃苓湯, 加減瀉白散, 加減小柴胡湯, 加減八物湯, 加減涼膈散, 化食養脾湯, 活血解毒湯, 藿香正気散, 葛根湯, 葛根黄連黄芩湯, 葛根加半夏湯, 葛根加苓朮附湯, 葛根紅花湯, 葛根湯加辛夷川芎湯, 加味温胆湯, 加味帰脾湯, 加味承気湯, 加味逍遥散, 加味逍遥散合四物湯, 加味八仙湯, 加味平胃散, 栝楼桂枝湯, 陥胸湯, 緩痃湯, 還魂湯, 甘遂半夏湯, 甘草湯, 甘草乾姜湯, 甘草瀉心湯, 甘草附子湯, 甘草麻黄湯, 寛中湯, 甘麦大棗湯, 甘連湯, 甘連大黄湯, 甘連大黄加石膏湯, 甘露飲, 帰耆建中湯, 桔梗湯[外台], 桔梗解毒湯, 橘皮竹茹湯, 帰脾湯, 逆挽湯, 芎帰膠艾湯, 芎帰調血飲, 芎帰補中湯, 救逆湯, 響声破笛丸, 杏蘇散, 近郊方朮附湯, 駆風解毒散, 駆風触痛湯, 九味柴胡湯, 九味半夏湯, 九味檳榔湯, 荊芥連翹湯[一貫堂], 荊芥連翹湯[回春], 桂姜棗草黄辛附湯, 桂枝湯, 桂枝加黄耆湯, 桂枝加葛根湯, 桂枝加桂湯, 桂枝加厚朴杏仁湯, 桂枝加芍薬湯, 桂枝加芍薬生姜人参湯, 桂枝加芍薬大黄湯, 桂枝加朮附湯, 桂枝加大黄湯, 桂枝加附子湯, 桂枝加苓朮附湯, 桂枝甘草湯, 桂枝甘草龍骨牡蠣湯, 桂枝去桂加茯苓白朮湯, 桂枝去芍薬湯, 桂枝去芍薬加蜀漆龍骨牡蠣湯, 桂枝去芍薬加蜀漆龍骨牡蠣救逆湯, 桂枝去芍薬加麻黄附子細辛湯, 桂枝芍薬知母湯, 桂枝桃仁湯, 桂枝二越婢一湯, 桂枝二越婢一湯加苓朮附, 桂枝二麻黄一湯, 桂枝人参湯, 桂枝附子湯, 桂枝麻黄各半湯, 啓脾湯, 行気香蘇散, 香芎湯, 香砂平胃散, 香砂六君子湯, 香蘇散, 蒿枕無憂散, 合壁飲, 厚朴七物湯, 厚朴生姜半夏甘草人参湯, 五虎湯, 古今録験続命湯, 五積散, 五物大黄湯, 五淋散, 柴葛解肌湯, 柴陥湯, 柴胡加芒硝湯, 柴胡去半夏加栝楼湯, 柴胡桂枝湯, 柴胡桂枝乾姜湯, 柴胡四物湯, 柴胡清肝散, 柴胡疎肝湯, 柴胡別甲湯, 柴胡養栄湯, 柴芍六君子湯, 柴朴湯, 柴苓湯, 酸棗仁湯, 滋陰降火湯, 滋陰至宝湯, 四陰煎, 紫苑散, 四逆湯, 四逆加人参湯, 四逆散, 四君子湯, 紫根牡蠣湯, 梔子甘草豉湯, 梔子柏皮湯, 四順湯, 四順清涼飲, 滋腎明目湯(腎気明目湯), 紫蘇子湯, 紫蘇和気飲, 七味白朮湯, 瀉胃湯, 炙甘草湯, 芍甘黄辛附湯, 芍薬湯, 芍薬湯加大黄, 芍薬甘草湯, 芍薬甘草附子湯, 芍薬甘草附子大黄湯, 謝導人大黄湯, 瀉白散, 瀉脾湯, 瀉脾湯加龍骨牡蠣, 十全大補湯, 十味敗毒湯, 十六味流気飲, 順気和中湯, 潤腸湯, 春林赫石脂湯, 正気天香湯, 生姜甘草湯, 生姜瀉心湯, 小建中湯, 小柴胡湯, 小柴胡湯加黄連茯苓, 小柴胡湯加桔梗石膏, 小柴胡合半夏厚朴湯, 小青竜湯, 小青竜加石膏湯, 小青竜合麻杏甘石湯, 小続命湯, 椒梅湯, 椒梅瀉心湯, 常檳湯, 消風散, 升麻葛根湯, 逍遥散, 升陽散火湯, 舒筋立安散, 除湿補気湯, 助陽和血湯, 辛夷散, 腎炎一方, 腎気明目湯, 秦艽防風湯, 沈香降気湯, 参蘇飲, 腎疸湯, 神秘湯, 清胃瀉火湯, 清咽利膈湯, 清湿化痰湯, 清上蠲痛湯, 清上防風湯, 清暑益気湯, 生津湯, 清心蓮子飲, 清燥養栄湯, 清熱解鬱湯, 清熱補気湯, 清肺湯, 清涼飲, 洗肝明目湯, 川芎茶調散, 千婚湯, 喘四君子湯, 銭氏白朮散, 旋覆花代赭石湯, 続命湯, 疎経活血湯, 蘇子降気湯, 大黄甘草湯, 大青竜湯, 大続命湯, 大桃花湯, 大百中飲, 大防風湯, 断痢湯, 治黄胖方, 竹茹温胆湯, 竹皮大丸, 竹葉湯, 竹葉石膏湯, 治酒査鼻方, 治喘一方, 治打撲一方, 治頭瘡一方, 治頭痛一方, 知母茯苓湯, 中建中湯, 中正湯, 調胃承気湯, 丁香柿蔕湯, 釣藤散, 丁附理中湯, 通導散, 通脉四逆湯, 定喘湯, 桃核承気湯, 当帰飲子, 当帰建中湯, 当帰四逆湯, 当帰四逆加呉茱萸生姜湯, 当帰鬚散, 当帰拈痛湯, 当帰白朮散, 当帰白朮湯, 謄龍湯, 独活葛根湯, 独活寄生湯, 頓嗽湯, 内疎黄連湯, 内托散 [回春], 内托散 [千金], 二朮湯, 二陳湯, 女神散, 人参散, 人参湯, 人参養栄湯 [局方], 人参養栄湯 [聖済], 敗毒湯, 排膿湯, 貝母湯, 肺癰湯, 白頭翁加甘草阿膠湯, 麦門冬湯, 麦門冬飲子, 八味丸合人参湯, 八味逍遥散, 八物湯, 八珍湯, 半夏散料, 半夏湯, 半夏厚朴七物湯, 半夏瀉心湯, 百合固金湯, 白朮附子湯, 白虎加桂枝湯, 白虎加人参湯, 茯苓甘草湯, 茯苓杏仁甘草湯, 茯苓桂枝甘草大棗湯, 茯苓四逆湯, 茯苓沢瀉湯, 茯苓補心湯, 附子粳米湯, 附子理中湯, 分心気飲, 平胃散, 変製心気飲, 補陰湯, 防已黄耆湯, 防已地黄湯, 防已茯苓湯, 防風通聖散, 補腎湯, 牡丹皮散, 補中益気湯, 牡蠣湯, 奔豚湯 [金], 奔豚湯 [広済], 奔豚湯 [小品], 奔豚湯 [肘後方], 奔豚茯苓湯, 本方芍薬湯, 麻黄湯, 麻黄加朮湯, 麻黄加苓朮附湯, 麻黄附子甘草湯, 麻黄連軺赤小豆湯, 麻杏甘石湯, 麻杏薏甘湯, 蔓荊子散, 味麦益気湯, 明朗飲, 木通散, 養肺湯, 薏苡仁湯 [明医指掌], 抑肝散, 抑肝散加陳皮半夏湯 [浅井南溟], 抑肝散加陳皮半夏湯 [本朝経験], 理中安蛔湯, 理中湯, 六君子湯, 立効散, 龍骨湯, 龍胆瀉肝湯 [薛氏], 龍胆瀉肝湯 [一貫堂], 涼膈散, 苓甘姜味辛夏湯, 苓甘姜味辛夏仁湯, 苓甘姜味辛夏仁黄湯, 苓甘五味姜辛湯, 良枳湯, 苓桂甘棗湯, 苓桂五味甘草湯, 苓桂朮甘湯, 羚羊角飲, 連翹湯 [眼科], 連翹湯 [丹毒], 連翹湯 [本朝経験], 連珠飲, 弄玉湯, 六鬱湯, 六物附子湯, カンゾウエキス, カンゾウ粗エキス, 風引湯, 香砂養胃湯
広恵済急方(日本古典) 

Tips!

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└1-5. 痰厥
: 痰が胸につまり気を失う
【疾患注釈】此病は中気(卒に気を失い、歯を食いしばり、目をにらみつけ、且つその身冷えて咽に痰の聲なし)と同じ ただはじめに眩暈ありて、卒に倒れ聲出ず、咽に痰の聲ありて、潮の湧くがごとく咽につまり、歯をくいしめ、目を見つめ息荒し
【用法】先(まず)嗅ぎ薬(何か嗅ぐ薬)を用て嚏(くさめ)を取べし 其次に塩湯に生姜のしぼり汁を入れて用ゆ尤もよろし、竹歴を加るもよろし、又甘草一味刻て濃煎じ、多く飲しむべし、痰を吐て癒なり <上巻25丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└1-11. 疔毒昏憒
: 疔の毒により気を失う
【疾患注釈】凡人平居無事にして、暴(にわか)に死る者あり、何故なる事をしるべからざるは、撚紙(こより)に火を點(とも)し死人の遍身(そうみ)を見るべし、若(もし)小瘡(ちいさいできもの)あらば、是疔毒内に入たるなり 面部等の顯(あらわれ)たる所に生たるは、見易き故に知易し、身體手脚(からだてあし)の隠たる所に生じたるは見えがたきゆえ知かたし、故に往々見誤る事あり、又は初発に憎寒壮(さむけつよく)熱ありて、傷寒と會(こころえ)て療理し、救わざるに至る物あり、此証急に救わざれば半日に死す、死て後其屍(そのしかばね)に紫黒の点あるべし、疔毒なり、故に此証緩(ゆるやか)にすべからず 
【用法】甘草緑豆粉、辰砂、各等分細末にして二三匁を用ゆべし <上巻50丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-12. 脚気衝心
: 脚気の毒が脚より腹に入り胸元へ衝き上げる状態
【疾患注釈】凡(おおよそ)此証最初に脚膝弱、或は頑麻(しびれ)、或はだるく痛、或は轉筋抅急(すじひきつめ)、或は踵跟(きびす)足心(あしのうら)等隠隠(どこともなく)痛、或は脛脚(はぎすね)に肘腫(むくみ)ある等の証ありて、或は小腹(したばら)麻痺(しびれ)、卒(にわか)に嘔吐を発し上衝(つきあげ)強く、肩にて息をなし、喘息して白汗出、乍(たちまち)寒乍熱、煩悶(くるしみもがき)やまず、或は精神漸々に恍惚となり、或は譫語(たわごと)を発し、遂に無性となる、是脚気の衝心にて九死一生なり、急に理法を施すべし 又其初憎寒(さむけ)壮(つよく)、熱いで全く傷寒のごとくなる有見誤るべからず 衝心の節に至りて、病発に右の如く脚に疾(やまい)ある事を知ざれば、理療に違ひあり、病人も心付ず別の事と思ひ、告語(つげいた)らず、事を誤ることあり よくよく心を用て問べし 
【用法】黒豆一合、水三合を一合五勺に煎じて飲べし、甘草を加え煎じて服す、最もよし <上巻61丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└1-13. 積気暈倒
: 胸腹の激痛により目をまわす
【疾患注釈】此証初発に頭痛身熱、或は憎寒(さむけして)、後に大に熱を発し、小腹(したばら)痛を作(なし)て、胸を脇肋(わきばら)に引疼(ひきいたみ)、甚しきは咬牙(きばをかみ)ふるえて反張(そりかえり)、冷汗出て流るるがごとくにして死なんとするあり、又咬牙(きばをかみ)反張(そりかえり)なくして卒然(にわか)に暈(めくるめく)倒るるものあり、或は大小便閉るあり、又積気厥逆(つきあげ)て、心腹(むねはら)共に膨張(はりつめ)て、背膂(せなかかた)引痛、嘔吐乾嘔(はきけえたき)、或は痰沫を吐き、或は心胸(むねさき)に湊(つきつめ)、或は脇肋(わきばら)へ筑(さしこみ)て腹中刺がごとく痛、或はついに厥逆(てあしひえ)あがり、死せんとするものあり 
【用法】香附子末となし、白湯にて服す、或は縮砂の末、甘草の末少し加え服す <上巻68丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-13. 積気暈倒
: 胸腹の激痛により目をまわす
【疾患注釈】疝気衝逆(せんきつきあぐる): 素より陰嚢腫痛事有か又腰少腹(したはら)など拘急(ひきはる)ものこの証あり、又左もなくして忽然(たちまち)起る者あり、其証少腹より胸膈(むなさき)まで衝上(つきあげ)引疼(ひきいたみ)て、前の積気(しゃくき)と同証を見(あらわ)すなり
【用法】甘草末白湯にて服す <上巻69丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-14. 癲癇卒倒
: 癲癇の病にて俄に倒れる
【疾患注釈】今迄無事なるに似て、忽わっと聲を発して仆(たおるる)者多し、又聲なくして倒るる者あり、何れも目をすえ、直視、或は上竄(めだまかみつり)て白沫を吐、手足搐搦(びくつき)、目ぶたびくつき、或は偏引(かたかたへひきつり)、揺頭(かしらうごき)、振身(みふるえ)、咬牙(きばをかむ)、或は息絶、脈も絶たるがごとく、口開身やわらかにして死人の如なる者あり、然れどもながきは一時又は半時、短は暫時にして舊(もと)のごとし、醒(さめ)れば夢のごとし、是癲癇の証候なり
【用法】釣藤鈎甘草一匁ずつ水に煎じ、服さしむべし <上巻72丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-9. 心腹卒痛
: 心腹(むねはら)突然痛くなる
 └ 瘀血痛: 心痛(むねいたみ)、湯水を飲て嚥下(のみくだせ)ば、必吃逆(しゃっくり)をなすは瘀血(わるち)とす、腹痛一処(ひとところ)にて他所へいつまでも移ず、動かざるは瘀血なり
【用法】芍薬甘草を等分にして、煎服す <中巻35丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-1. 金瘡
: 刀や脇差等による切り傷の類
 └ 鳥銃子人肉中打込: 鳥銃子(てっぽうだま)人の肉の中へ打込たる
【用法】天南星、末となし、甘草の煎汁にて和(まぜ)傳(つく)べし <中巻57丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-11. 諸獣囓傷
: 獣に噛まれる
 └ 瘈狗囓: 瘈(やまい)犬に囓まれたる
【用法】防風升麻葛根甘草各三分、杏仁一匁五分、水茶椀に二杯を一杯に煎服す、最よし、豺狼(やまいいぬ、おおかみ)に囓(かまれ)たるも、此方よし <中巻90丁>

5. 諸物入九竅: 諸物が身体の竅に入る類
└ 5-7. 諸物入肉
: 棘が刺さる
 └ 竹木刺咽刺: 竹又は木の刺(とげ)たちたる
【用法】甘草を嚼(かみ)て津(つま)に和(まぜ)傳(つけ)妙なり <下巻35丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-1. 中諸薬毒
: 諸薬の毒にあたる
【疾患注釈】諸々の薬の毒に中(あたり)たるなり
【用法】
甘草壹匁、黒豆貮匁煎じ服す、一切の薬毒に妙なり
甘草三匁、水三椀を一椀半に煎て滓を去て、後緑豆粉を入再び煎じ、數(たびたび)沸(わきた)て半両入て服す <下巻39丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-1. 中諸薬毒
: 諸薬の毒にあたる
 └ 中野葛毒: 野葛の毒に中(あたり)たる
【疾患注釈】山野に有り、和名つたうるし、蔓草なり 其藤色(つるいろ)赤節高(あかくふしたか)く、節の所ごとに葉三つ、付て葛の葉に似て厚く光あり、節の間に花を開く 細にして黄なり、蔓を切ば汁出ず、人の身に付ば體(からだ)かぶれ痛痒(いたみかゆみ)をなし誤って食えば人を殺す
【用法】野葛の毒に中(あた)り、口開かざるものは、甘草一味水にて濃煎じ多飲て良 <下巻42丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-2. 中諸穀菜毒
: 穀類や野菜の毒にあたる
 └ 中茶毒: 茶の毒に中(あたり)たるなり
【用法】甘草一味煎じ服す <下巻46丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└6-2. 中諸穀菜毒
: 穀類や野菜の毒にあたる
 └中菌蕈類毒: 菌蕈(きのこ)の類の毒にあたる
【用法】甘草麻油(ごまのあぶら)に煎じ服すべし <下巻49丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-3. 中酒毒
: 酒、油、塩の毒にあたる
 └ 醒焼酒醉: 焼酒(しょうちゅう)に醉(よい)て醒(さめ)ざる
【用法】甘草を末となし煖(ぬるい)水に服す <下巻54丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-4. 中魚介禽獣肉毒
: 魚介、禽獣類の肉、他諸毒にあたる
 └ 中馬肉毒: 馬肉の毒に中(あたり)たる
【用法】犬肉と同じ 甘草を濃く煎じて多く飲てよし <下巻59丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-4. 中魚介禽獣肉毒
: 魚介、禽獣類の肉、他諸毒にあたる
 └ 中毒通療: ものにあたりおしなえて治す
【用法】黒豆を煮て汁を取多く服す、甘草を加えて煎じ服す極めてよし、此方最効(なかんずくししるし)あり、或は升麻を加ふ、亦よし <下巻61丁>

10. 小児急証: 小児の急病
└10-7. 驚風
: 新生児のひきつけ
 └慢驚風: 大抵大病の後、或は大便瀉利、或は吐乳食(ちち、くいものをはく)こと數日の後に俄に昏悶(うっとりとなり)、驚搐(びくつき)、竄視(うえをみつめる)等の証あり
【疾患注釈】痰盛んになる
【用法】甘草、一味多少にかかわらず煎じ飲(のま)しむべし <下巻91丁>
関連情報新訂和漢薬
同類生薬新疆甘草 (Glycyrrhiza inflata Batal)
参考文献JP18: 第18改正日本薬局方.
CP2020: 中華人民共和国薬典 (2020年版) .
C1) 和漢薬百科図鑑 Vol. I, pp.42-45.
C2) 生薬学概論, pp.284-285.
C3) Planta Med.,48,38(1983).
C4) Chem.Pharm.Bull.,33,210(1985).
C5) Biochim.Biophys.Acta,921,275(1987).
C6) J.Biochem.,103,504(1988).
C7) Biochem.Pharmacol.,40,291(1990).
C8) Biochem.Pharmacol.,41,1025(1991).
C9) Planta Med.,298(1984).
C10) Chem.Pharm.Bull.,40,1208(1992).
L1) 官準 広恵済急方.
L2) 近世歴史資料集成第2期 (第9巻) 民間治療(2).
L3) 新訂 和漢薬 pp. 327-329.
備考- 新疆甘草はGlycyrrhiza inflata Batalの根及びストロンで,glycyrrhizin抽出用とする.
- 甘草の飲片をそのまま,もしくは蜂蜜につけて炙ったものを「炙甘草」と称する.甘草は清熱解毒の力が強く,炙甘草は補中益気の効能が強い.
- 漢方処方で最も汎用される生薬.甘草エキスは煙草,醤油などの矯味料としての需要も多い.
- ミネラルコルチコイド作用により,長期間多量(1日50g以上)に服用すると低カリウム血症,高ナトリウム血症,浮腫,高血圧,心臓障害を起こす.極端な場合は偽アルドステロン症を発症する.
更新日2022/11/02