資料館生薬データベース

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生薬名

入手時名称半夏
正式名称半夏
日本語読みはんげ, Hange
現地読みBanxia
ラテン名Pinelliae Tuber (JP), Pinelliae Rhizoma (CP)
英語名Pinellia Tuber (JP), (CP)
原植物名Pinellia ternata Breit., カラスビシャク
原植物科名Araceae, サトイモ科
薬用部位分類植物性生薬
細分類塊茎
入手先情報日本, 大阪府, 新和物産
入手年月日1970/12/23
TMPW No654

首都、省都または行政区域代表地点(都道府県庁所在地など)を表示しています。  
産地情報
https://ethmed.toyama-wakan.net/img/pin_san.png
34.6937378
135.50216509999996
入手先情報
日本,大阪府
https://ethmed.toyama-wakan.net/img/pin_nyu.png

学術情報データベース

一般生薬名半夏, Banxia, Pinelliae Tuber (JP18), Pinelliae Rhizoma (CP2020), Pinellia Tuber (JP18, CP2020)
生薬異名珍珠半夏
生薬画像
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原植物名Pinellia ternata Breitenbach, カラスビシャク
原植物画像
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原植物科名Araceae, サトイモ科
薬用部位塊茎(外皮を除去したもの).
選品粒が大きく揃っていて,白色のものが良品.帯赤色や帯黒色のもの,また質が硬くなったものは劣品(TN).
公定書日局18,薬典(2020)
臨床応用鎮嘔,鎮吐,鎮静,去痰薬として,胃内停水があって,その上逆による悪心,嘔吐,咳嗽,心悸,目眩,頭痛,急性胃カタル,咽喉腫痛,妊娠悪阻,不眠症などに応用する.
医学体系中国医学
伝統医学的薬効分類化痰薬
薬効[性味] 辛、温;有毒.
[帰経] 脾、胃、肺経.
[効能] 燥湿化痰,降逆止嘔,消痞散結.
[主治] 湿痰寒痰,咳喘痰多,痰飲眩悸,風痰眩暈,痰厥頭痛,嘔吐反胃,胸脘痞悶,梅核気症に応用し,癰腫痰核に外用する.
成分情報脂質 Lipids
セロブロシド [Cerebroside](1-O-glucosyl-N-2'-acetoxy palmytoyl-4,8-sphingodienineを主とする脂質)

その他の脂肪族関連化合物 Other aliphatic and related compounds
(*C1):
粘液物質 [mucilaginous substance], Ca-oxalate

単糖類 Monosaccharides
(*C1):
D-Glucose, Glucuronic acid, L-Rhamnose

多糖類 Polysaccharides
(*C1):
デンプン [starch], 高分子多糖 [macromolecular polysaccharide]

トリテルペノイド Triterpenoids
(*C1):
Triterpenoid

ステロール Sterols
(*C1):
beta-Sitosterol, beta-Sitosteryl glucoside

その他の芳香族化合物 Other aromatic compounds
(*C1,C2):
Homogentisic acid, Homogentisic acid glucoside, 3,4-Dihydroxybenzaldehyde, 3,4-Dihydroxybenzaldehyde diglucoside

アミノ酸 Amino acids
(*C1,C2):
Arginine, Aspartic acid, Glutamic acid, Serine, Glycine

アルカロイド Alkaloids
(*C1,C2):
l-Ephedrine (微量 [a tiny amount])

その他の含窒素化合物 Other nitrogen compounds
(*C1):
Choline

その他 Others
(*C1):
無機質 [mineral]

成分 構造式

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薬理作用制吐(煎液).唾液分泌(煎液:初期に増加,後期に減少).鎮咳(煎液).胃潰瘍抑制(水エキス).抗炎症(水エキス).抗アレルギー.
DNA配列 伝統医薬データベース.
証類本草(中国古典)※画像をクリックすると本文の画像が表示されます
適応症咳嗽, 多痰, 悪心, 嘔吐, 胸が苦しい, めまい, 動悸, 不眠, 頭痛, 胃カタル, 急性胃炎, 妊娠悪阻
方剤温経湯, 温胆湯, 越婢加半夏湯, 延年半夏湯, 黄耆別甲湯, 黄芩加半夏生姜湯, 黄連湯, 解急蜀椒湯, 加減小柴胡湯, 化食養脾湯, 藿香正気散, 葛根加半夏湯, 夏檳湯, 加味温胆湯, 加味小陥胸湯, 加味八仙湯, 栝楼湯, 乾姜人参半夏丸, 甘遂半夏湯, 甘草瀉心湯, 寛中湯, 橘皮半夏湯, 九味柴胡湯, 九味半夏湯, 香砂六君子湯, 蒿枕無憂散, 厚朴生姜半夏甘草人参湯, 厚朴麻黄湯, 五積散, 柴葛解肌湯, 柴陥湯, 柴胡加芒硝湯, 柴胡加龍骨牡蠣湯, 柴胡桂枝湯, 柴胡四物湯, 柴芍六君子湯, 柴朴湯, 柴苓湯, 紫蘇子湯, 瀉脾湯, 瀉脾湯加龍骨牡蠣, 順気和中湯, 小陥胸湯, 生姜瀉心湯, 小柴胡湯, 小柴胡湯加黄連茯苓, 小柴胡湯加桔梗石膏, 小柴胡合半夏厚朴湯, 小青竜湯, 小青竜加石膏湯, 小青竜合麻杏甘石湯, 椒梅瀉心湯, 小半夏湯, 小半夏加茯苓湯, 消痞湯, 舒筋立安散, 腎炎一方, 参蘇飲, 清湿化痰湯, 千婚湯, 旋覆花代赭石湯, 蘇子降気湯, 大柴胡湯, 大半夏湯, 断痢湯, 竹茹温胆湯, 竹葉石膏湯, 治頭痛一方, 知母茯苓湯, 中正湯, 丁香柿蔕湯, 丁香茯苓湯, 釣藤散, 定喘湯, 当帰湯, 当帰白朮散, 当帰白朮湯, 二朮湯, 二陳湯, 肺疳方, 麦門冬湯, 半夏散料, 半夏乾姜散, 半夏湯, 半夏厚朴湯, 半夏厚朴七物湯, 半夏瀉心湯, 半夏白朮天麻湯, 附子粳米湯, 分心気飲, 変製心気飲, 奔豚湯 [金], 奔豚湯 [広済], 奔豚湯 [集験方], 奔豚湯 [肘後方], 奔豚茯苓湯, 射干麻黄湯, 抑肝散加陳皮半夏湯 [浅井南溟], 抑肝散加陳皮半夏湯 [本朝経験], 利膈湯, 六君子湯, 苓甘姜味辛夏湯, 苓甘姜味辛夏仁湯, 苓甘姜味辛夏仁黄湯, 良枳湯, 六鬱湯, 六物黄芩湯, 不換金正気散料
広恵済急方(日本古典) 

Tips!

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-1. 中風
: 気を失い半身・手脚きかず、目・口ゆがむ病態 閉証(実証)と脱証(虚証)の二証がある 
閉証(実証)病状: 卒に倒れ、気を失い、人をしらず、歯を食いしめ、拳を握り、痰を吐くように喘息し、眼口歪み、半身不随、眼を見つめ、或は上目遣いでいるのは中風の閉証である 
【疾患注釈】凡(おおよそ)卒倒れて口ひらき、手撤(ひらき)、眼を合(ねむり)大便又は小便をもらし、鼻聲鼾(いびき)の如くなるは脱証にて虚候とす、別に療法あり、後條に載たり、実証にも目瞑(ねむり)、大小便をもらす者ありといえども、其口噤手を握るを以て実候とす、虚候は口も手もともに開く、是其証候おのずから同じからざる所なり、若視あやまつときは、療法も亦大に誤る心を用いて診すべし 
【用法】暖かい場所で介抱する 天南星半夏を等分の粉末とし、鼻の穴に吹き入れて嚏(くさめ)をださせる <上巻2丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-2. 脱陽
:突然元気がなくなり気を失う、吐瀉後意識不明となる
卒(にわか)に倒れ、無性になり、口を開、手をひろげ、大便又は小便をもらし、或は汗出て流がごとく或は汗いでず、惣身手足ともに温に、目を合(ふさぎ)、鼻息麁(あらく)鼾(いびき)の如く、或は痰咽にぜりぜりといえる音あり、或は痰の音なく、或は面赤、又はうす黒く、又は顔色粧(よそおふ)がごとき、是脱陽也
【疾患注釈】凡(おおよそ)霍亂(かくらん)等にて吐瀉やまず、又は夥(おびただ)しく吐瀉したる後元気ともしく、手足冷えあがり、ひや汗出て陰嚢しじみあがり、手足搐(びくびく)し、面くろく、息づかいせわしく、或は手足の筋引きつまり、漸々(ぜんせん)に無性に成る者あり、みな陽脱の候とす 或は常々喘息もちとて短気(いきぎれ)つよく、左の乳の下の動気つよき人遽(にわか)に脱陽することおおし、又暴(にわかに)瀉(くだし)後、或は厠の内、或は厠より出て卒(にわか)に倒るるあり、是等皆脱陽なれば療法皆同じ
【用法】吐瀉の後 脱陽の証嘔気やまず薬も受ざる者あり、此証には半夏壱匁、附子壱匁煎じ服すべし、嘔気やみて後参附湯、又汗おおきは芪附湯の類を用ゆべし、かつ気海天樞中脘(きかいてんすうちゅうかん)に多く灸して、其上に塩を炒り紙に幾重にも裹(つつみ)、病人の胸腹背中を絶え間なく熨べし、扨て炒り塩に呉茱萸を刻、等分にして攪(かきまぜ)て、臍下(ほそのした)気海陰交の次(あたり)を是又絶えずのすべし、或は葱の白根を一握りほど索(なわ)にてしかとくくり、根と葉とを切り捨て、其切り口を烈火(つよきひ)にて撚(もや)し、熱くなりたる所を病人の臍下(ほそのした)に着置き、其上より火熨(ひのし)に火を盛り熨すべし <上巻17丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-5. 痰厥
: 痰が胸につまり気を失う
【疾患注釈】此病は中気と同じ、惟(ただ)初に眩暈ありて、卒(にわか)に倒れ聲出ず、咽に痰の聲ありて、潮の湧くがごとく咽につまり、齒をくいしめ、目を見つめ息麁(あら)し 
【用法】
半夏茯苓等分煎じ服す <上巻26丁>
・ 大なる半夏十四粒皀莢一條(すじ)刻て水二鐘(はい)入て一鐘(はい)に煎じ生姜汁を入温め服すべし <上巻26丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-9. 恐怖卒死
: 物に驚いて目を回す
 凡人夕暮れ又は夜中厠にいき、或は郊野へ出て、或は空冷屋室に遊び、又はしらざる所の地に行き、ふと異形のものを見て口鼻の内へ邪悪の気を吸い入れ、たちまち地に倒れ、手脚冷え上がり、両手を握り、面の色青黒く、或は口鼻より清血を流すことあり 
【疾患注釈】凡(おおよそ)卒(にわか)に倒れて無性に成し病人は、聲を立ることなき者なり、惟小児の驚風並に大人の癲癇驚怖(てんかんものおどろき)して気絶するとの三証は、叫聲(わっとこえ)をあぐる也 是を其証拠(しょうことす)
【用法】病人を外へ移し動かすべからず、其所に置て親戚衆人圍繞(しんるいおおぜいうちより)て火を焚き、安息香麝香の類香ある薬を焼き、人の覺(おぼえ)少々出るを待てうごかすべし 先急に半夏の末を鼻孔中(はなのあなのうち)へ管にて吹込或は皀莢の末両鼻中に吹入るよし <上巻34丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-10.霍乱
: 驕(この)病乾湿の二つあり、湿霍乱は吐瀉(はきくだ)して腹痛甚しきなり、乾霍乱は吐もせず瀉(くだし)もせず惟(ただ)心腹纒続大(むねはらしぼるごとくいたみ)に苦悶(くるしむ)を言なり 何れも危急なる証にて種々の変化一條に載がたし、療法も亦変化あり 
湿霍乱: 病発(びょうはつ)に頭痛痃痺(めまい)ある者あり、又頭痛痃痺なく初より先吐して後に瀉(くだす)者あり、先瀉して後に吐するあり、吐瀉の前より腹痛甚しきあり、吐瀉ありて後に腹痛甚しきあり、何れも腹中ひきしめ痛まざるはなし、扨吐して吐やまず、瀉して瀉やまず、或は吐瀉ともにやまず、湯も薬も口に入らず、或は口乾て水を飲んとし、或は悪寒甚しく、或は熱を発し、喘急(いきづかいせわ)しく手足共に厥冷(ひえあがり)戦掉(ふるえ)、軽きは両脚轉筋(すじひきつめ)重きは惣身(そうみの)轉筋(すじひきつめ)、冷汗出脣(くちびる)舌動かず漸々(ぜんぜん)に昏(つかれ)倦(むちゅうに)なるなり
嘔吐并乾嘔不已: 嘔吐ならびにからえたきやまざる
【用法】
    ・ 半夏一味煎じ生姜の絞り汁入服す、呉茱萸乾姜の二味もよし、且(そのうえ)中脘に灸すべし 間使の穴(かんしのあな)に灸するもよろし <上巻37丁>
    ・ 手足冷るは生半夏一匁、生附子一匁、生姜三片、水二杯を一杯半に煎じ用ゆ <上巻37丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-12. 脚気衝心
: 脚気の毒が脚より腹に入り胸元へ衝き上げる状態
【疾患注釈】凡(おおよそ)此証最初に脚膝弱、或は頑麻(しびれ)、或はだるく痛、或は轉筋抅急(すじひきつめ)、或は踵跟(きびす)足心(あしのうら)等隠隠(どこともなく)痛、或は脛脚(はぎすね)に肘腫(むくみ)ある等の証ありて、或は小腹(したばら)麻痺(しびれ)、卒(にわか)に嘔吐を発し上衝(つきあげ)強く、肩にて息をなし、喘息して白汗出、乍(たちまち)寒乍熱、煩悶(くるしみもがき)やまず、或は精神漸々に恍惚となり、或は譫語(たわごと)を発し、遂に無性となる、是脚気の衝心にて九死一生なり、急に理法を施すべし 又其初憎寒(さむけ)壮(つよく)、熱いで全く傷寒のごとくなる有見誤るべからず 衝心の節に至りて、病発に右の如く脚に疾(やまい)ある事を知ざれば、理療に違ひあり、病人も心付ず別の事と思ひ、告語(つげいた)らず、事を誤ることあり よくよく心を用て問べし 
【用法】半夏二匁、水に煎じ生姜汁多く入服すべし <上巻61丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-13. 積気暈倒
: 胸腹の激痛により目をまわす
【疾患注釈】此証初発に頭痛身熱、或は憎寒(さむけして)、後に大に熱を発し、小腹(したばら)痛を作(なし)て、胸を脇肋(わきばら)に引疼(ひきいたみ)、甚しきは咬牙(きばをかみ)ふるえて反張(そりかえり)、冷汗出て流るるがごとくにして死なんとするあり、又咬牙(きばをかみ)反張(そりかえり)なくして卒然(にわか)に暈(めくるめく)倒るるものあり、或は大小便閉るあり、又積気厥逆(つきあげ)て、心腹(むねはら)共に膨張(はりつめ)て、背膂(せなかかた)引痛、嘔吐乾嘔(はきけえたき)、或は痰沫を吐き、或は心胸(むねさき)に湊(つきつめ)、或は脇肋(わきばら)へ筑(さしこみ)て腹中刺がごとく痛、或はついに厥逆(てあしひえ)あがり、死せんとするものあり 
【用法】半夏一味煎じ服さしめてよし、乾嘔(からえたき)あるに最よし <上巻68丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-15. 血厥
: 突然うつ状態になり、動かなくなる 婦人に多い 
【用法】半夏の末或は皀莢の末を鼻に吹込嚏を取、酢を火盆(ひばち)に傾け入れて、烟を鼻中へ沖入(つきいら)しめてよし  <上巻73丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-19. 醉舩
: 船酔い、轎(かご)酔い、山に酔う
 └ 醉舩:人船に乗て眩暈、或は嘔吐、或は瀉(くだし)、頭痛、煩悶(もがきもだ)える事あり
   【用法】嘔吐止ざるは、半夏陳皮茯苓の三味等分煎じ飲てよし <上巻78丁>
 └ 轎舩: 人轎(かご)に乗、漸々(せんせん)に風雲中(かぜくもうち)に坐するがごとく頭痛甚しく、悪心(むねわる)くなり、最甚(もっともはなはだしき)は暈倒(めまいたおるる)に至る
   【用法】速やかに熱湯の中に生姜の絞汁を入、拌(かきまぜ)飲しめてよし、又半夏一味煎じ服す <上巻79丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-11. 卒瘂(そつあ)
: 突然話すことができなくなる
【疾患注釈】人俄に言語(ものいうこと)ならず、聲いでざるなり 
【用法】橘皮半夏、水にて煎じ服す <中巻38丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-12. 懸壅垂長
: 突然口蓋垂腫れる
【疾患注釈】おおよそ人咽喉(のど)の前、上顎より垂れる肉あり、俗にひこと云、此ひこ暴(にわか)に腫垂長(はれたれなが)くなりて、咽喉に妨悶(さしさわり)をなす事あり、是懸壅垂長と云なり 懸壅とはひこのことなり 
【用法】乾姜半夏、二味末となし、舌に着けて嚥(のむこみ)てよし <中巻40丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-1. 金瘡
: 刀や脇差等による切り傷の類
 └ 刀割、斧、夾剪、鑓箭一切諸傷癜: 刀にてきり、斧にてきり、夾剪にてきり、鑓やいっさいもろもろの傷
【用法】生半夏を研り末となし、帯血傷処に敷(つけ)てよし、血自(おのずと)止む <中巻56丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-4. 跌撲、堕落、靨倒、閃挫、落馬
(うちうたれ、たかき所よりおち、おしたおされ、くじき、らくば)
【用法】おおよそ靨打(おしうたれ)れて気絶したるは、其人をして僧の坐禅するが如くに坐(すわ)らしめ、一人は其頭髪を将(もち)て控張(ひきはり)て、半夏の末を鼻孔の中に吹き入るべし、猪牙、皀莢の末、或は胡椒の末を吹きいるも亦よし、嚏(くさめ)をして活却(いきふくかえ)さば、生姜の絞汁香油(ごまのあぶら)を拌匂(かきまぜ)て灌(のましむ)べし <中巻61丁>

8. 臨産急証: 出産に関する急病
└ 8-1. 難産

 └ 盤腸産: 臨産先子腸(さんせんとしてまずはらわた)出で後、其腸収(おさまら)ず 
【用法】半夏末となし、産母の鼻孔へ管にて吹き入るべし、嚏(くさめ)出て収まる <下巻73丁>

9. 産後急証: 産後に関する急病
└ 9-1. 血暈
: 血の道症
 └ 血逆昏暈: 産後惡露(おりもの)下ること少して、胸腹脹痛み、或は一時昏暈(くらみめまい)、血壅(ふさがり)、痰盛に悪血心に上衝(つきあげ)、或は面赤色澤(おもてあかくいろつや)あり、口噤(くちつぐみ)、頭仰(かしらあおぎ)、頸直(えりすぐ)に人事を知ざるは、血逆昏暈なり 
【用法】微醒(すこしさむる)を覺(おぼえ)ば、急に生鷄卵壱枚(ひとつ)破(わり)呑下さしめてよし、若し効(しるし)なきは、童子の小便を多く飲てよし、尚治せずんば、竹歴を多く飲(のま)しむべし、又半夏末となし、管を以て鼻孔へ吹き入れ、嚏(くさめ)を取てよし <下巻77丁>

10. 小児急証: 小児の急病
└ 10-7. 驚風
: 新生児のひきつけ
疱瘡初発昏冒(ほうそうのしょはつにひきつくる): 状(かたち)驚風のことくなるあり、混淆(いちがい)にすべからず、其初の証は、呵欠(あくび)いで、噴嚏(くさめ)して耳の尖(とがり)冷(ひゆる)ものなり、扨(さて)昏睡(うとうとねむり)、面赤、顋頬(ほほあご)亦赤し、乍(たちまち)涼乍熱を発するあり、如斯(かくのごとく)して俄に驚風のことく、驚搐(おろどきびくつく)、疱瘡の初候なり
【用法】【鼻にひねりこむ法】半夏の末鼻にひねりこみてよし、皀莢の末を等分に加え、ひねりてよし、嚏(くさめ)いづるをよしとす <下巻92丁>
関連情報新訂和漢薬
同類生薬水半夏(「備考」参照)
参考文献JP18: 第18改正日本薬局方.
CP2020: 中華人民共和国薬典 (2020年版) .
C1) 和漢薬百科図鑑 Vol. I, pp 45-47.
C2) 生薬学概論, p 327.
L1) 官準 広恵済急方.
L2) 近世歴史資料集成第2期 (第9巻) 民間治療(2).
L3) 新訂 和漢薬 pp. 601-602.
備考半夏は加工(修治)して用いられることがあり,加工品には法半夏,姜半夏などがある.法半夏は甘草と生石灰,姜半夏は生姜と明礬をそれぞれ用いて加工する.法半夏は燥湿,化痰,姜半夏は降逆止嘔に多用される.中国産の半夏市場品中にまれに Pinellia pedatisecta Schott,P. tripartita Schott オオハンゲまたはテンナンショウ属 Arisaema spp. の塊茎が混入される.水半夏は Typhonium sp. の塊茎である.
更新日2021/09/27