資料館生薬データベース

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生薬名

入手時名称大皂角
正式名称皂莢
日本語読みそうきょう, Sōkyō
現地読みDazaojao
ラテン名Gleditsiae Fructus Abnormalis (CP), Gleditsiae Fructus
英語名Chinise Honeylocust Abnormal Fruit (CP)
原植物名Gleditsia sinensis Lam., トウサイカチ
原植物科名Leguminosae, マメ科
薬用部位分類植物性生薬
細分類果実
産地情報中華人民共和国, 河北省安国
野生・栽培別栽培
入手年月日1988/03/06
蒐集者御影雅幸
TMPW No9019

首都、省都または行政区域代表地点(都道府県庁所在地など)を表示しています。  
38.418439
115.32664599999998
産地情報
中華人民共和国,河北省安国
https://ethmed.toyama-wakan.net/img/pin_san.png
入手先情報
https://ethmed.toyama-wakan.net/img/pin_nyu.png

学術情報データベース

一般生薬名皂莢, Zaojia, Gleditsiae Fructus Abnormalis (CP2020), Chinese Honeylocust Abnormal Fruit (CP2020)
生薬異名大皂角,唐皂莢,猪牙皂
生薬画像
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原植物名Gleditsia sinensis Lamarck, トウサイカチ
原植物科名Leguminosae, マメ科
薬用部位未熟果実, 成熟果実
公定書薬典(2020)
臨床応用去痰,利尿薬として,気管支炎の咳嗽,淋疾などに用いる.刺激作用があるので注意を要する.また民間では石鹸の代用,浴湯料に用いる.
医学体系中国医学
伝統医学的薬効分類化痰薬
薬効[性味] 辛、鹹,温;有小毒.
[帰経] 肺、大腸経.
[効能] 去痰開窮,散結消胖.
[主治] 中風口噤,昏迷不醒,癲癇痰盛,関竅不通,喉痺痰阻,頑痰喘咳,咳痰不爽,大便燥結に用い,癰腫に外用する.
成分情報その他の芳香族誘導体 Other aromatic derivatives
G. japonica (*C1):
Mollisacacidin(材/wood)

プリン誘導体 Purine derivatives
G. japonica (*C1):
Triacanthine(葉/leaf)

その他 Others
G. sinensis (*C1):
Gledinin(種子/seed)

成分 構造式

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薬理作用皂莢には比較的強い溶血作用がある.また皂莢の水浸剤(1:3)は試験管内において数種の皮膚真菌ならびに大腸菌,チフス菌,パラチフス菌,緑膿菌,変形菌などグラム陰性菌に対して抑制作用がある.
適応症痰, 咳嗽, 淋疾, 中風, 気管支炎
方剤希有処方に配合
広恵済急方(日本古典) 

Tips!

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-1. 中風
: 気を失い半身・手脚きかず、目・口ゆがむ病態 閉証(実証)と脱証(虚証)の二証がある 
 └ 閉証(実証)病状: 卒に倒れ、気を失い、人をしらず、歯を食いしめ、拳を握り、痰を吐くように喘息し、眼口歪み、半身不随、眼を見つめ、或は上目遣いでいるのは中風の閉証である
【疾患注釈】凡(おおよそ)卒倒れて口ひらき、手撤(ひらき)、眼を合(ねむり)大便又は小便をもらし、鼻聲鼾(いびき)の如くなるは脱証にて虚候とす、別に療法あり、後條に載たり、実証にも目瞑(ねむり)、大小便をもらす者ありといえども、其口噤手を握るを以て実候とす、虚候は口も手もともに開く、是其証候おのずから同じからざる所なり、若視あやまつときは、療法も亦大に誤る心を用いて診すべし 
【用法】暖かい場所で介抱する 皀莢細辛を等分の粉末とし、鼻の穴に吹き入れてクシャミをださせる <上巻2丁>
 └【疾患注釈】痰壅不省: 痰が塞がっていて正気ではない状態 
【用法】皀莢らふ子ともに等分を刻んで水から煎じて服せず痰を吐く <上巻4丁>
 
1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-5. 痰厥
: 痰が胸につまり気を失う
【疾患注釈】此病は中気(卒に気を失い、歯を食いしばり、目をにらみつけ、且つその身冷えて咽に痰の聲なし)と同じ ただはじめに眩暈ありて、卒に倒れ聲出ず、咽に痰の聲ありて、潮の湧くがごとく咽につまり、歯をくいしめ、目を見つめ息荒し
【用法】大なる半夏十四粒皀莢一條(すじ)刻て水二鐘(はい)入て一鐘(はい)に煎じ生姜汁を入温め服すべし <上巻26丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-9. 恐怖卒死
: 物に驚いて目を回す
凡人夕暮れ又は夜中厠にいき、或は郊野へ出て、或は空冷屋室に遊び、又はしらざる所の地に行き、ふと異形のものを見て口鼻の内へ邪悪の気を吸い入れ、たちまち地に倒れ、手脚冷え上がり、両手を握り、面の色青黒く、或は口鼻より清血を流すことあり 
【疾患注釈】凡(おおよそ)卒(にわか)に倒れて無性に成し病人は、聲を立ることなき者なり、惟小児の驚風並に大人の癲癇驚怖(てんかんものおどろき)して気絶するとの三証は、叫聲(わっとこえ)をあぐる也 是を其証拠(しょうことす)
【用法】病人を外へ移し動かすべからず、其所に置て親戚衆人圍繞(しんるいおおぜいうちより)て火を焚き、安息香麝香の類香ある薬を焼き、人の覺(おぼえ)少々出るを待てうごかすべし 先急に半夏の末を鼻孔中(はなのあなのうち)へ管にて吹込或は皀莢の末両鼻中に吹入るよし <上巻34丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-14. 癲癇卒倒
: 癲癇の病にて俄に倒れる
【疾患注釈】今迄無事なるに似て、忽わっと聲を発して仆(たおるる)者多し、又聲なくして倒るる者あり、何れも目をすえ、直視、或は上竄(めだまかみつり)て白沫を吐、手足搐搦(びくつき)、目ぶたびくつき、或は偏引(かたかたへひきつり)、揺頭(かしらうごき)、振身(みふるえ)、咬牙(きばをかむ)、或は息絶、脈も絶たるがごとく、口開身やわらかにして死人の如なる者あり、然れどもながきは一時又は半時、短は暫時にして舊(もと)のごとし、醒(さめ)れば夢のごとし、是癲癇の証候なり 
【用法】皀莢を煎じたる汁を鼻孔の内へ灌入れるべし、涕唾(はなつば)おおく出て甦、若皀莢なき時は、冷水をおおく鼻へ灌入べし <上巻72丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-15. 血厥
: 突然うつ状態になり、動かなくなる 婦人に多い 
【疾患注釈】又は鬱冒という 人平居疾なし、たちまち死人のごとくにて動揺(はたら)かず、黙りて人をしらず、婦人に尤もこの証多し 
【用法】半夏の末或は皀莢の末を鼻に吹込嚏を取、酢を火盆(ひばち)に傾け入れて、烟を鼻中へ沖入(つきいら)しめてよし <上巻73丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-1. 吐血
: 人忽(たちまち)血を吐(はく)なり 此証一様ならず故に七ケ條に分たり
 └ 大怒吐血: 人大いに怒る事ありて後煩熱を発し吐血するものあり、或は胸脇のあたり痛み満悶あり 
【用法】南京の焼き物を砕き末にして、皀莢子の煎じ湯にて二銭許(もんめばかり)を服す <中巻6丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-18. 小便急閉
: 排尿困難、閉尿となり下腹が満ちる
【疾患注釈】小便にわかに閉じて通ぜず、下腹堅く脹り満ち悶えさわぐ物あり 
【用法】皀莢の末を鼻に入れ、嚏(くさめ)を出して良し <中巻47丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-19. 脱頷
:頷が外れる
【疾患注釈】人口を大きく開いて笑い、或はあくびをしそこないて頷着かけがねはずれて、口を合わすことならざるなり 
【用法】酒を酔う程に飲ませて、眠りたる中に皀莢の末を鼻孔に吹き入れ、嚏(くさめ)をさせて自然になおる <中巻48丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-4. 趺撲、堕落、靨倒、閃挫、落馬
(うちうたれ、たかき所よりおち、おしたおされ、くじき、らくば): 趺撲、堕落、靨倒、閃挫、落馬: うちうたれ、高き所より落ち、おし倒され、挫き、落馬する
【用法】おおよそ靨打(おしうたれ)れて気絶したるは、其人をして僧の坐禅するが如くに坐(すわ)らしめ、一人は其頭髪を将(もち)て控張(ひきはり)て、半夏の末を鼻孔の中に吹き入るべし、猪牙皀莢の末、或は胡椒の末を吹きいるも亦よし、嚏(くさめ)をして活却(いきふくかえ)さば、生姜の絞汁に香油(ごまのあぶら)を拌匂(かきまぜ)て灌(のましむ)べし <中巻61丁>

4. 横死の類: 病死以外の死
└ 4-4. 溺死

【用法】白礬の末を鼻孔中に吹き入れ、熬鹽(いりしお)を臍中に擦り付け、猪牙皀莢末にして綿に包み、穀道の中へ納置、釜或は鍋の類を地上に覆置き、其上へ溺人を俯けに臥、溺人の臍と釜の臍とを相合わせて、脚の後(かかと)を少し高くし、手を以て溺人の頭を托ば、口中より自ずから水出て息吹き返すべし、もし口噤みて開かざるは、筋を横にふくませてよし、図と見合わせ見るべし ※後に図有り<下巻10丁>

10. 小児急証: 小児の急病
└ 10-7. 驚風
: 新生児のひきつけ
疱瘡初発昏冒(ほうそうのしょはつにひきつくる): 状(かたち)驚風のことくなるあり、混淆(いちがい)にすべからず、其初の証は、呵欠(あくび)いで、噴嚏(くさめ)して耳の尖(とがり)冷(ひゆる)ものなり、扨(さて)昏睡(うとうとねむり)、面赤、顋頬(ほほあご)亦赤し、乍(たちまち)涼乍熱を発するあり、如斯(かくのごとく)して俄に驚風のことく、驚搐(おろどきびくつく)、疱瘡の初候なり 
【用法】【搐鼻法(鼻にひねりこむ法)】
半夏の末鼻にひねりこみてよし、皀莢の末を等分に加え、ひねりてよし、嚏(くさめ)いづるをよしとす <下巻92丁>
広恵済急方の植物画像

   (原文)

   (訳文)
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関連情報新訂和漢薬
同類生薬皀角子,皀角刺
参考文献CP2020: 中華人民共和国薬典 (2020年版) .
C1) 和漢薬百科図鑑 Vol. I, pp 248-249.
L1) 官準 広恵済急方
L2) 近世歴史資料集成第2期 (第9巻) 民間治療(2) pp. 143, 291.
L3) 新訂 和漢薬
備考トウサイカチ Gleditsia sinensis Lam. の未熟果実を乾燥したものが「猪牙皂」, 「牙皂」, 「小牙皂」, 「眉皂」, 成熟果実を乾燥したものが「皂角」,「大皂角」, 「懸刀」, 「唐皂莢」である.「唐皂莢」と称するものの中には未成熟品もある.
かつて「猪牙皂」の原植物は ホソミサイカチ G. officinalis Hemsley とされてきたが,果実の比較から,トウサイカチと ホソミサイカチ は同一種であることが判明した.『証類本草』の付図にはこれを2種として記載している.
日本産のものは サイカチ G. japonica Miq. の成熟果実を乾燥したもの.種子を「皂角子」,幹の刺を「皂角刺」と称し薬用とする.
更新日2022/01/28