資料館生薬データベース
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学術情報データベース
一般生薬名 | 蒲黄, Puhuang, Typhae Pollen (CP2020), Cattail Pollen (CP2020) | |||||
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生薬画像 |
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原植物名 | Typha angustifolia Linn.1, Typha latifolia Linn.2, Typha orientalis Presl.3, Typha davidiana Handel-Mazzetti, ヒメガマ1,ガマ2,コガマ3 | |||||
原植物画像 |
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原植物科名 | Typhaceae, ガマ科 | |||||
薬用部位 | 成熟した花粉 | |||||
選品 | 特異臭があり,全質一様に深黄色を呈するものが良い.色相が淡かったり濃くても不均等なものは悪い(NI). | |||||
公定書 | 薬典(2020) | |||||
臨床応用 | 止血,通経,利尿薬として諸出血症,小便不利,血滞経閉,産後の痛み,心腹痛,血淋,打撲症,癰腫などに応用する. | |||||
医学体系 | 中国医学 | |||||
伝統医学的薬効 | 分類 | 止血薬 | ||||
薬効 | [性味] 甘,平. [帰経] 肝、心包経. [効能] 止血,化瘀,通淋. [主治] 吐血,衄血,喀血,崩漏,外傷出血,経閉痛経,胸腹刺痛,打撲腫痛,血淋渋痛に用いる. | |||||
成分情報 | 脂肪酸 Fatty acids T. angustifolia 花粉/pollen (*C1): Palmitic acid, Stearic acid その他の脂肪族関連化合物 Other aliphatic and related compounds T. angustifolia 花粉/pollen (*C1): Pentacosan 単糖類 Monosaccharides T. latifolia 花粉/pollen (*C1): Glucose, Fructose, Rhamnose, Xylose, Arabinose 少糖類 Oligosaccharides T. latifolia 花粉/pollen (*C1): Kojibiose, Nigerose, Maltose, Isomaltose, Sucrose, Turanose, Leucrose, Maltotriose, Raffinose,オリゴ糖/ oligosaccharides ステロール Sterols T. angustifolia 花粉/pollen (*C1): beta-Sitosterol フラバノンとジヒドロフラボノール Flavanones & Dihydroflavonols T. angustifolia 花粉/pollen (*C1): Isorhamnetin glycosides | |||||
成分 構造式 |
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薬理作用 | 未詳.利尿作用,止血効果 (フラボノイド). | |||||
DNA配列 | X84147 | |||||
適応症 | 出血, 吐血, 鼻血, 経閉, 喀血, 胃痛, 腹痛, 外傷出血, 打撲, 小便不利 | |||||
方剤 | 希有処方に配合 | |||||
広恵済急方(日本古典) Tips! | 2. 卒暴諸証: 突然発症する病 └ 2-3. 歯衂舌衂: 歯より血出るなり、舌より血出るなり └ 歯衂: 齒縫齦(はのすき はぐき)との間より血出るなり 又は、齒を抜き血出て不止 おおよそ人口より血出て、吐血か齒衂か分ち難は、涼水(ひやみず)に漱(くちすすぐ)べし、血頃(しばしの間)止むは齒衂也、止ざるは吐血也 【用法】蒲黄(池沼に生ずる蒲の穂に有る黄色なる粉なり)炒焦、末となし付くべし <中巻20丁> 2. 卒暴諸証: 突然発症する病 └ 2-17. 舌卒腫大: 突然舌腫大になる 【疾患注釈】人舌卒に腫、大になりて口中に満(みつる)者あり 【用法】生蒲黄を塗べし、少許(すこしばかり)乾姜の末を加え、最よし <中巻45丁> 3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷 └ 3-1. 金瘡: 刀や脇差等による切り傷の類 └ 刀割、斧、夾剪、鑓箭一切諸傷癜: 刀にてきり、斧にてきり、夾剪にてきり、鑓やいっさいもろもろのきず 【用法】蒲黄、傳(つけ)てよし <中巻57丁> 3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷 └ 3-2. 舌断: 舌を切る 【疾患注釈】大人小兒偶(ふと)小刀を含、誤て舌頭を割斷(きりたち)、己(やがて)垂落(さがりおち)たりともいまだ斷(きれ)きらざる 【用法】跌仆(つまずきたお)れて舌を突斷(きりたち)血出で、或は不覺(おぼえず)自咬傷(かみやぶり)て血不止(ちやまざる)は、ともにとりのはねを米醋にひたし、頻(ひたもの)に傷處を刷(はらう)べし、血自止、仍(よって)蒲黄蜜に和(まぜ)てふくみてよし <中巻60丁> 7. 婦人産前急証: 妊婦の産前に関する急病 └ 7-1. 胎動 【疾患注釈】妊娠の婦人、胎気和(たいのきか)せず、或は夫の為に困(くるしめ)られ、胎動して腹痛絶入(たえい)らんとするは、胎動と名づく、其証腰より小腹(したはら)へかけ痛て、心(むね)へ搶(つき)あけ急に救(すくわ)ざれば堕胎(たいおと)す、或は産門より血下る 【用法】妊婦八九个月(かげつ)の頃、腹内動いて子生(うまれん)とするは 蒲黄二匁、新汲(くみたての)水にて服すべし <下巻63丁> └ 7-2. 胎漏: 産門からの出血 【疾患注釈】懐妊の婦人、卒(にわか)に産門より血下る事あり 若(もし)房事(ぼうじ)を犯て血下るを、真胎漏と名づく、總(すべ)て此証は腹痛なし、急に理(じ)せざれば胎を堕(おとす)に至べし、尿孔より血下るは、又別なり 【用法】蒲黄一匁白湯にて用べし <下巻65丁> 9. 産後急証: 産後に関する急病 └ 9-2. 崩漏: 産後の大量出血 【疾患注釈】婦人俄(にわか)に陰門より血多出ることあり、脱血(ちおりること)過多(おびただし)ければ、元気接續(とりつづき)がたく、死に至る 急に救べし、産後腹中鳴るもの、崩漏することあるものなり、油斷すべからず 【用法】蒲黄二両、水に煎じ服す <下巻80丁> | |||||
広恵済急方の植物画像 |
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関連情報 | 新訂和漢薬 | |||||
参考文献 | CP2020: 中華人民共和国薬典 (2020年版) . C1) 和漢薬百科図鑑 Vol. Ⅱ, pp 116-117. L1) 官準 広恵済急方. L2) 近世歴史資料集成第2期 (第9巻) 民間治療(2) pp. 444, 546. L3) 新訂 和漢薬. | |||||
備考 | その他 Typha minima Funk. も用いる.市場品は主にヒメガマとガマの花粉である.中国市場には花粉に葯や花糸の混入された 「草蒲黄」 がある.韓国産蒲黄はコガマ T. orientalis Presl. の花粉である.『古事記』に所出する出雲神話「因幡の白兎」の伝説も,この蒲黄を止血,傷薬に用いている. | |||||
更新日 | 2023/09/27 | |||||