資料館生薬データベース

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生薬名

入手時名称生姜
正式名称生姜
日本語読みしょうきょう, Shōkyō
現地読みShengjiang
ラテン名Zingiberis Rhizoma (JP), Zingiberis Rhizoma Recens (CP)
英語名Ginger (JP), Fresh Ginger (CP)
薬用部位分類植物性生薬
細分類根茎
産地情報中華人民共和国, 雲南省
入手先情報日本(ToS), 大阪府, ㈱栃本天海堂(試供品)
入手年月日2018/12/20
蒐集者小松かつ子
TMPW No30022

首都、省都または行政区域代表地点(都道府県庁所在地など)を表示しています。  
24.880095
102.83289100000002
産地情報
中華人民共和国,雲南省
https://ethmed.toyama-wakan.net/img/pin_san.png
34.6937249
135.5022535
入手先情報
日本(ToS),大阪府
https://ethmed.toyama-wakan.net/img/pin_nyu.png

学術情報データベース

一般生薬名生姜, Shengjiang, Zingiberis Rhizoma (JP18), Zingiberis Rhizoma Recens (CP2020), Ginger (JP18), Fresh Ginger (CP2020)
生薬画像
More
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原植物名Zingiber officinale Roscoe , ショウガ
原植物画像
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原植物科名Zingiberaceae, ショウガ科
薬用部位根茎(コルク皮を去り乾燥)
選品よく肥大し,内部が白色を呈し,辛味の強いものが良品である.若い根は良くない(TN).
公定書日局18,薬典(2020)
臨床応用芳香性健胃,鎮嘔,去痰,食欲増進薬として新陳代謝機能を促進し,水毒を去る目的で,嘔吐,咳嗽,腸満,腹痛,感冒,頭痛,鼻づまりなどに用いる.
医学体系中国医学
伝統医学的薬効分類辛温解表薬
薬効[性味] 辛,微温.
[帰経] 肺,脾,胃経.
[効能] 解表散寒,温中止嘔,化痰止咳,解魚蟹毒.
[主治] 風寒感冒,胃寒嘔吐,寒痰咳嗽,魚介中毒に応用する.
成分情報その他の脂肪族関連化合物 Other aliphatic and related compounds
(*C1):
Methylheptenone, Nonylaldehyde

モノテルペノイド Monoterpenoids
(*C1):
beta-Phellandrene, Camphene, Citral, Linalool, d-Borneol, Farnesene, alpha-Terpineol, Nerol, Sabinene, 1,8-Cineol, Myrcene

セスキテルペノイド Sesquiterpenoids
(*C1):
Zingiberol, alpha-Zingiberene, alpha-Bisabolene, beta-Bisabolene, gamma-Bisabolene, alpha-Curcumene, beta-Curcumene, Zerumbone

その他の芳香族誘導体 Other aromatic derivatives
(*C1):
Hexahydrocurcumine, Dihydrogingerol, Desmethylhexahydrocurcumine, Zingerone, Shogaol, [6]-Gingerol, [8]-Gingerol, [10]-Gingerol, Dehydrogingerone

成分 構造式





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薬理作用中枢抑制([6]-gingerol,[6]-shogaol).鎮痛([6]-shogaol).プロスタグランジン生合成阻害([6]-gingerol,[6]-dehydrogingerone).鎮痙(精油).伝導麻酔(水エキス).抗腫瘍(水エキス).嘔吐抑制(生姜汁).
DNA配列AF202418, AF254460, U42081, L05465, AJ388298; 伝統医薬データベース.
証類本草(中国古典)※画像をクリックすると本文の画像が表示されます
適応症感冒, 腹痛, 吐き気, 消化不良, 嘔吐, 咳嗽
方剤異功散, 胃苓湯, 茵蔯四逆湯, 烏頭桂枝湯, 烏薬順気散, 烏苓通気湯, 温経湯, 温胆湯, 越婢湯, 越婢加朮湯, 越婢加半夏湯, 延年半夏湯, 黄耆桂枝五物湯, 黄耆建中湯, 黄芩加半夏生姜湯, 解労散, 加減胃苓湯, 加減小柴胡湯, 加減八物湯, 化食養脾湯, 藿香正気散, 葛根湯, 葛根加半夏湯, 葛根加苓朮附湯, 葛根湯加辛夷川芎湯, 加味温胆湯, 加味帰脾湯, 加味逍遥散, 加味逍遥散合四物湯, 加味八仙湯, 加味平胃散, 栝楼湯, 栝楼桂枝湯, 帰耆建中湯, 橘皮湯, 橘皮枳実生姜湯, 橘皮竹茹湯, 橘皮半夏湯, 帰脾湯, 逆挽湯, 救逆湯, 近郊方朮附湯, 九味半夏湯, 九味檳榔湯, 桂姜棗草黄辛附湯, 桂枝湯, 桂枝加黄耆湯, 桂枝加葛根湯, 桂枝加桂湯, 桂枝加厚朴杏仁湯, 桂枝加芍薬湯, 桂枝加芍薬生姜人参湯, 桂枝加芍薬大黄湯, 桂枝加朮附湯, 桂枝加大黄湯, 桂枝加附子湯, 桂枝加龍骨牡蠣湯, 桂枝加苓朮附湯, 桂枝去桂加茯苓白朮湯, 桂枝去芍薬湯, 桂枝去芍薬加蜀漆龍骨牡蠣湯, 桂枝去芍薬加蜀漆龍骨牡蠣救逆湯, 桂枝去芍薬加麻黄附子細辛湯, 桂枝芍薬知母湯, 桂枝生姜枳実湯, 桂枝桃仁湯, 桂枝二越婢一湯, 桂枝二越婢一湯加苓朮附, 桂枝二麻黄一湯, 桂枝附子湯, 桂枝麻黄各半湯, 啓脾湯, 鶏鳴散 [時方歌括], 桂枝二越婢一湯加苓朮附, 桂枝二麻黄一湯, 桂枝附子湯, 桂枝麻黄各半湯, 啓脾湯, 鶏鳴散 [時方歌括], 鶏鳴散加茯苓, 行気香蘇散, 香砂平胃散, 香砂六君子湯, 香蘇散, 厚朴七物湯, 厚朴生姜半夏甘草人参湯, 五積散, 呉茱萸湯, 柴葛解肌湯, 柴陥湯, 柴胡加芒硝湯, 柴胡加龍骨牡蠣湯, 柴胡去半夏加栝楼湯, 柴胡桂枝湯, 柴胡厚朴湯, 柴胡四物湯, 柴胡養栄湯, 柴芍六君子湯, 柴朴湯, 柴苓湯, 紫苑散, 四君子湯, 梔子生姜豉湯, 紫蘇和気飲, 実脾湯, 柿蔕湯, 炙甘草湯, 芍薬湯加大黄, 赤小豆湯, 瀉脾湯, 瀉脾湯加龍骨牡蠣, 十味敗毒湯, 順気和中湯, 潤肺湯, 春林赫石脂湯, 生姜甘草湯, 生姜瀉心湯, 小建中湯, 小柴胡湯, 小柴胡湯加黄連茯苓, 小柴胡湯加桔梗石膏, 小柴胡合半夏厚朴湯, 小続命湯, 小半夏湯, 小半夏加茯苓湯, 消痞湯, 升麻葛根湯, 逍遥散, 秦艽別甲湯, 参蘇飲, 真武湯, 清湿化痰湯, 清上蠲痛湯, 清熱解鬱湯, 清肺湯, 旋覆花代赭石湯, 増損木防已湯, 疎経活血湯, 蘇子降気湯, 大柴胡湯, 大青竜湯, 竹茹温胆湯, 竹葉湯, 知母茯苓湯, 釣藤散, 通脉四逆湯, 当帰建中湯, 当帰四逆加呉茱萸生姜湯, 当帰白朮散, 二朮湯, 二陳湯, 敗毒湯, 排膿湯, 排膿散及湯, 貝母湯, 八味逍遥散, 八物湯, 八珍湯, 半夏厚朴湯, 半夏白朮天麻湯, 白朮附子湯, 茯苓飲, 茯苓甘草湯, 茯苓沢瀉湯, 分消湯, 分心気飲, 平胃散, 防已散, 防已黄耆湯, 防風通聖散, 補中益気湯, 補肺湯, 奔豚湯 [金], 奔豚湯 [集験方], 奔豚湯 [深師], 奔豚湯 [肘後方], 奔豚茯苓湯, 麻黄五味湯, 麻黄連軺赤小豆湯, 味麦益気湯, 木通散, 射干麻黄湯, 六君子湯, 龍骨湯, 六鬱湯, 香砂養胃湯
広恵済急方(日本古典) 

Tips!

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-1. 中風
: 気を失い半身・手脚きかず、目・口ゆがむ病態 閉証(実証)と脱証(虚証)の二証がある 
閉証(実証)病状: 卒に倒れ、気を失い、人をしらず、歯を食いしめ、拳を握り、痰を吐くように喘息し、眼口歪み、半身不随、眼を見つめ、或は上目遣いでいるのは中風の閉証である 
【疾患注釈】痰壅不省: 痰が塞がっていて正気ではない状態
【用法】
生姜の絞り汁を白湯に入れかき混ぜて飲む 又は、それに白礬を加えて服用すると最も良い <上巻4丁>
童の小便生姜の絞り汁を等分よく混ぜ服用する <上巻4丁>
ごまの油生姜の絞り汁をたらして撹拌し、飲む <上巻4丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-2. 脱陽
:突然元気がなくなり気を失う、吐瀉後意識不明となる
卒(にわか)に倒れ、無性になり、口を開、手をひろげ、大便又は小便をもらし、或は汗出て流がごとく或は汗いでず、惣身手足ともに温に、目を合(ふさぎ)、鼻息麁(あらく)鼾(いびき)の如く、或は痰咽にぜりぜりといえる音あり、或は痰の音なく、或は面赤、又はうす黒く、又は顔色粧(よそおふ)がごとき、是脱陽也
【疾患注釈】凡(おおよそ)霍亂(かくらん)等にて吐瀉やまず、又は夥(おびただ)しく吐瀉したる後元気ともしく、手足冷えあがり、ひや汗出て陰嚢しじみあがり、手足搐(びくびく)し、面くろく、息づかいせわしく、或は手足の筋引きつまり、漸々(ぜんせん)に無性に成る者あり、みな陽脱の候とす 或は常々喘息もちとて短気(いきぎれ)つよく、左の乳の下の動気つよき人遽(にわか)に脱陽することおおし、又暴(にわかに)瀉(くだし)後、或は厠の内、或は厠より出て卒(にわか)に倒るるあり、是等皆脱陽なれば療法皆同じ
【用法】桂枝壱両刻み好酒(よきさけ)にて煎じ飲しむ可(べ)し、若(もし)桂枝無きときは、葱の白根其侭(そのまま)廿本許(ばかり)を刻み、好酒にて濃くせんじ飲しめてよし、或は生姜を擦(すり)て一両其侭酒にて煎じ用ゆ、又効(しるし)あり <上巻17丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-4. 中気
: 気が塞がり倒れる
【疾患注釈】此証大抵中風の閉証と同じければ、前の中風の所と合せ見るべし、然ながら中風は身温也 中気は身冷(すず)し、脈も又中風は浮也、中気は沈也 大抵此証の起る前に心気を労し、又は大きに怒事あり、或は怒をこらえ又は思案することありて気の鬱(こり)し時に発する証なり、元皆七情の過極(すききわま)りたるより起る、世に中気中風を一つに心會(こころえ)たる人多し、初は大抵理法も似たる様なれども、後に至りては大に同じからず 
【用法】先初に鼻に胡椒の末又は烟草(たばこ)の粉を吹込、嚏(くさめ)をさせ、後に酢を火盆(ひばち)の内へ傾け入れて、酢の気を病人に嗅せ、且隠白湧泉の次(あたり)に灸してよし、生姜の絞り汁を湯にて拌(かきまぜ)飲(のませ)てよし <上巻24丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-5. 痰厥
: 痰が胸につまり気を失う
【疾患注釈】此病は中気と同じ、惟(ただ)初に眩暈ありて、卒(にわか)に倒れ聲いてず、咽に痰の聲ありて、潮の湧くがごとく咽につまり、齒をくいしめ、目を見つめ息麁(あら)し
【用法】
・ 先ず嗅ぎ薬を用て嚏(くさめ)を取べし 其次に塩湯に生姜の絞汁を入れて用ゆ 尤よろし、竹瀝を加るもよろし、又甘草一味刻て濃煎じ、多く飲しむべし、痰を吐て癒なり <上巻25丁>
白礬に末となし生姜の自然汁(しぼりじる)にて調え服すべし <上巻26丁>
・ 大なる半夏十四粒、皀莢一條(すじ)刻て水二鐘(はい)入て一鐘(はい)に煎じ生姜汁を入温め服すべし <上巻26丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-6. 中暑
: 暑気あたりで気を失い倒れる
【疾患注釈】頭痛大熱惣身(ずつうだいねつそうしん)を椚(な)て見るに、肌膚烙(やく)がごとく大に渇き、水を飲(のまん)とし、汗甚しく泄(もれ)出て漸々に無性に成るに至る、尤喘満熱をいやかるなり 
【用法】急に生姜一大塊を嚼(かみ)、爛(こまか)にし、冷水にて送下すべし <浄化28丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-8. 食厥
: 食べ物がつまり倒れる
【疾患注釈】卒(にわか)に眩痺(めまい)して仆(たおれ)、口噤て手足動かず、或は手足躁擾(もがきし)満悶(むなぐるし)く、漸々に昏冐(うっとり)して無性となる、全く中風の閉証のごとく見ゆれども、口目ゆがむ事なく痰の聲なし、扨(さて)腹を按(お)しみるに、心下(むなさき)はりて下腹やわらかにして、右の天枢の邉或は中脘の次(あたり)に塊あり、是を按(おせ)ば、顔を顰(しかめ)、いたみある様子に見えて、兎角胸の中を苦しむていあり 
【用法】
・ 急に開噤法([中風の條]くいしめたる歯を開く法)をもってくちを開き、濃く煎じたる塩湯に生姜絞汁を入、ぬるま湯にして多くのませ、なおそのうえに鳥の毛(はね)又は紙撚にて咽を探り吐すべし <上巻33丁>
・ 吐て後紫蘇葉煎じ服す、生姜を入れ煎じ服す亦よし <上巻33丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-9. 恐怖卒死
: 物に驚いて目を回す
凡人夕暮れ又は夜中厠にいき、或は郊野へ出て、或は空冷屋室に遊び、又はしらざる所の地に行き、ふと異形のものを見て口鼻の内へ邪悪の気を吸い入れ、たちまち地に倒れ、手脚冷え上がり、両手を握り、面の色青黒く、或は口鼻より清血を流すことあり 
【疾患注釈】凡(おおよそ)卒(にわか)に倒れて無性に成し病人は、聲を立ることなき者なり、惟小児の驚風並に大人の癲癇(てんかん)驚怖(ものおどろき)して気絶するとの三証は、叫聲(わっとこえ)をあぐる也 是を其証拠(しょうことす)
【用法】雄黄姜汁(しょうがのしぼりじる)醇酒(こいさけ)等分に攪(かきま)ぜ煎じ沸(わかす)こと数度にして飲しむべし <上巻34丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-10.霍乱
: 驕(この)病乾湿の二つあり、湿霍乱は吐瀉(はきくだ)して腹痛甚しきなり、乾霍乱は吐もせず瀉(くだし)もせず惟(ただ)心腹纒続大(むねはらしぼるごとくいたみ)に苦悶(くるしむ)を言なり 何れも危急なる証にて種々の変化一條に載がたし、療法も亦変化あり 
 └ 湿霍乱: 病発(びょうはつ)に頭痛痃痺(めまい)ある者あり、又頭痛痃痺なく初より先吐して後に瀉(くだす)者あり、先瀉して後に吐するあり、吐瀉の前より腹痛甚しきあり、吐瀉ありて後に腹痛甚しきあり、何れも腹中ひきしめ痛まざるはなし、扨吐して吐やまず、瀉して瀉やまず、或は吐瀉ともにやまず、湯も薬も口に入らず、或は口乾て水を飲んとし、或は悪寒甚しく、或は熱を発し、喘急(いきづかいせわ)しく手足共に厥冷(ひえあがり)戦掉(ふるえ)、軽きは両脚轉筋(すじひきつめ)重きは惣身(そうみの)轉筋(すじひきつめ)、冷汗出脣(くちびる)舌動かず漸々(ぜんぜん)に昏(つかれ)倦(むちゅうに)なるなり
  └ 忽然(たちまち)心腹ひきしめて痛て吐瀉する
  【用法】生姜を擦り、汁を絞り去て、滓を炒熱し、紙につつみ、腹ならびに臍下気海背の十一椎と十二椎の次(あたり)と腰の所を熨すべし <上巻36丁>
  └ 嘔吐并乾嘔不已: 嘔吐ならびにからえたきやまざる
  【用法】
 ・ 半夏一味煎じ生姜の絞り汁入服す、呉茱萸乾姜の二味もよし、且(そのうえ)中脘に灸すべし 間使の穴(かんしのあな)に灸するもよろし <上巻37丁>
・ 手足冷るは生半夏一匁、生附子一匁、生姜三片、水二杯を一杯半に煎じ用ゆ
  └ 吐下後渇: 吐き下した後に渇
  【用法】粳米を水を入れて研(すり)て、その汁を温め、中へ竹瀝汁を入攪(かきまぜ)てのませてよし、粟黍の類何れも水に煮て汁を取服さしむべし、又粳米のとぎみずを温服すべし <上巻39丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-10.霍乱
: 驕(この)病乾湿の二つあり、湿霍乱は吐瀉(はきくだ)して腹痛甚しきなり、乾霍乱は吐もせず瀉(くだし)もせず惟(ただ)心腹纒続大(むねはらしぼるごとくいたみ)に苦悶(くるしむ)を言なり 何れも危急なる証にて種々の変化一條に載がたし、療法も亦変化あり 
 └ 乾霍乱: 忽然(たちまち)心下(むなさき)痞(つかえ)かたく腹肚(はら)はりしぼるように痛堪がたく漸々に煩躁擾亂(もがきさわぎ)、吐んとして吐ず、瀉(くだ)さんとして瀉さず、手足逆冷(ひえあがり)冷汗出、胸膈(むね)かたく起(おこ)りふさがり、頃刻(しばらくのうち)に命危証なり 
  └ 先(まず)心下(むなさき)いたみ悪心、或は乾嘔(からえたき)なとし、心下(むなさき)に邪物ありて按(おし)て痛む
  【用法】濃塩湯の中へ童子の小便生姜の絞汁を加えて頓(いちがい)に服するもよし <上巻48丁>
  └ 中脘以下小腹へかけ、絞るが如く痛甚、是を按ば中脘より下腹の方に塊ある 
  【用法】厚朴生姜の汁に付炙、研末となし、白湯にてニ匁許を用ゆ 類は厚朴刻、炙、煎、汁を入拌(かきまぜ)用う、或は肉桂枳実をくわう <上巻48丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-11. 疔毒昏憒
: 疔の毒により気を失う
 凡人平居無事にして、暴(にわか)に死る者あり、何故なる事をしるべからざるは、撚紙(こより)に火を點(とも)し死人の遍身(そうみ)を見るべし、若(もし)小瘡(ちいさいできもの)あらば、是疔毒内に入たるなり 面部等の顯(あらわれ)たる所に生たるは、見易き故に知易し、身體手脚(からだてあし)の隠たる所に生じたるは見えがたきゆえ知かたし、故に往々見誤る事あり、又は初発に憎寒壮(さむけつよく)熱ありて、傷寒と會(こころえ)て療理し、救わざるに至る物あり、此証急に救わざれば半日に死す、死て後其屍(そのしかばね)に紫黒の点あるべし、疔毒なり、故に此証緩(ゆるやか)にすべからず 
【用法】蒼耳一握り生姜三匁一つに搗きつぶして泥のごとくし、生頭酒(きざけ)一椀を入れてよくまぜて絞り、かすをとって燗酒にして服し、汗大いに出づるをよしとす <上巻50丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-12. 脚気衝心
: 脚気の毒が脚より腹に入り胸元へ衝き上げる状態
【疾患注釈】凡(おおよそ)此証最初に脚膝弱、或は頑麻(しびれ)、或はだるく痛、或は轉筋抅急(すじひきつめ)、或は踵跟(きびす)足心(あしのうら)等隠隠(どこともなく)痛、或は脛脚(はぎすね)に肘腫(むくみ)ある等の証ありて、或は小腹(したばら)麻痺(しびれ)、卒(にわか)に嘔吐を発し上衝(つきあげ)強く、肩にて息をなし、喘息して白汗出、乍(たちまち)寒乍熱、煩悶(くるしみもがき)やまず、或は精神漸々に恍惚となり、或は譫語(たわごと)を発し、遂に無性となる、是脚気の衝心にて九死一生なり、急に理法を施すべし 又其初憎寒(さむけ)壮(つよく)、熱いで全く傷寒のごとくなる有見誤るべからず 衝心の節に至りて、病発に右の如く脚に疾(やまい)ある事を知ざれば、理療に違ひあり、病人も心付ず別の事と思ひ、告語(つげいた)らず、事を誤ることあり よくよく心を用て問べし
【用法】
檳榔子末にして二匁、童子の小便にて用ゆべし、生姜汁を加るも亦よし <上巻61丁>
半夏二匁、水に煎じ生姜汁多く入服すべし <上巻61丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-13. 積気暈倒
: 胸腹の激痛により目をまわす
 └ 疝気衝逆(せんきつきあぐる): 素より陰嚢腫痛事有か又腰少腹(したはら)など拘急(ひきはる)ものこの証あり、又左もなくして忽然(たちまち)起る者あり、其証少腹より胸膈(むなさき)まで衝上(つきあげ)引疼(ひきいたみ)て、前の積気(しゃくき)と同証を見(あらわ)すなり
【用法】衝逆強く、痰のどに塞(ふさがる)は、香附子の末、浮石の末等分にして白湯に生薑の絞汁を拌(かきまぜ)て服す <上巻69丁>

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-19. 醉舩
: 船酔い、轎(かご)酔い、山に酔う
 └ 轎酔: 人轎(かご)に乗、漸々(せんせん)に風雲中(かぜくもうち)に坐するがごとく頭痛甚しく、悪心(むねわる)くなり、最甚(もっともはなはだしき)は暈倒(めまいたおるる)に至る
【用法】速やかに熱湯の中に生姜の絞汁を入、拌(かきまぜ)飲しめてよし、又半夏一味煎じ服す <上巻79丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-1. 吐血
: 人忽(たちまち)血を吐(はく)なり 此証一様ならず故に七ケ條に分たり
 └ 虚熱吐血: 患人(病人)面赤く、滑沢(つやつや、うるおい)甚だしく、或は躁悶(もだえさわぎ)、或は喘息して手足厥冷(冷えあがり)、或は小便清澄(すみ)、大便もやわらかに通じ、又は泄瀉し、遂に吐血て止まざるは虚陽の浮泛(うかみあかり)たるなり、血色鮮紅なり、尤大切の証なり
【用法】人尿生姜の絞汁を入れ、和匂(よくまぜ)て服す <中巻4丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-6. 急喉痺(きゅうこうひ)
: 突然咽喉部が腫れ塞がる
 └ 肺絶: 急に咽腫塞(はれふさがり)、痰喉に在て響き、聲鼾(いびき)のごとく、面色(おもてのいろ)青惨(あおざめ)たるは肺絶なり、至て危篤(あやうき)なり 
【用法】急に獨参湯を濃煎じ、生姜の絞汁と竹瀝少ずつ加えて、頻(しきり)に服さしむべし、若(もし)遅きときは十人に一人も活すべからず <中巻29丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-11. 卒瘂(そつあ)
: 突然話すことができなくなる
【疾患注釈】人俄に言語(ものいうこと)ならず、聲いでざるなり 
【用法】
らいふくの絞汁に生姜の絞汁を和(まぜ)、徐々(そろそろ)と服すべし <中巻38丁>
生姜汁をのむべし、又嚼食(かみくらう)もよし <中巻38丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-17. 舌卒腫大
: 突然舌腫大になる
【疾患注釈】人舌卒に腫、大になりて口中に満(みつる)者あり 
【用法】硼砂細末にして、切たる生薑につけ、舌を徐々(そろそろ)擦(する)べし <中巻45丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-1. 金瘡
: 刀や脇差等による切り傷の類
 └ 喉刎人: 咽を刎(はねきり)たる
【用法】先其人を仰臥(あおむけにねか)して枕を高し、頭面まえかぶりにして、刀口開かざる様にすべし、扨(さて)、風を避(よけ)、衣被(いるい)を蓋(おおい)て煖(あたたか)にすべし、若(もし)呼吸(いきづかい)に別条なきは、白米一合、人参一錢(もんめ)、生姜三片入て粥を焚、其粥の清(うわゆ)を啜(すすらせ)て元気を接(つづかせ)補て醫の來(いしゃのきたる)を竢(まつ)べし <中巻56丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-4. 趺撲、堕落、靨倒、閃挫、落馬(うちうたれ、たかき所よりおち、おしたおされ、くじき、らくば)

【用法】
・ おおよそ靨打(おしうたれ)れて気絶したるは、其人をして僧の坐禅するが如くに坐(すわ)らしめ、一人は其頭髪を将(もち)て控張(ひきはり)て、半夏の末を鼻孔の中に吹き入るべし、猪牙皀莢の末、或は胡椒の末を吹きいるも亦よし、嚏(くさめ)をして活却(いきふくかえ)さば、生姜の絞汁に香油(ごまのあぶら)を拌匂(かきまぜ)て灌(のましむ)べし <中巻61丁>
・ 血出ずして痛(いたみ)推(ただ)其處の色、あるいは青、或は紫なるは、先ず葱の白根を刻み細かにして炒り熱くし、其痛む處を擦り、熨しあたためて灸に大黄の末を生姜の絞汁に調(ととのえ)て敷(つけ)て、其人の酒量に随(したがい)醉ほど好酒(よきさけ)を飲ましむべし <中巻63丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-10. 諸蟲咬傷
: 諸々の虫に刺される/咬まれる
 └ 蜘蛛咬傷: 蜘蛛に咬傷(かみやぶら)れる
【用法】炮(あぶりたる)生姜を貼(つけ)てよし <中巻75丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-10. 諸蟲咬傷
: 諸々の虫に刺される/咬まれる
 └ 蟲咬(何の蟲知らず): 蟲(何の虫かわからない)に咬傷れる
【用法】腫痛(はれいたむ)は、汁(しょうがのしぼりじる)にて其處を洗い、後に明礬雄黄の末を貼(つけ)てよし <中巻80丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-11. 諸獣囓傷
: 獣に噛まれる
 └ 瘈狗囓: 瘈(やまい)犬に囓まれたる
【用法】生姜汁(しぼりじる)、鉄漿(おはぐろ)右二味等分にして、冷たるままにて一合許ずつを飲べし <中巻90丁>

4. 横死の類: 病死以外の死
└ 4-5. 凍死

【疾患注釈】初は顔色青惨(あおざめ)、或は目運(めまい)し、後には惣身すくみ手足ふるえ、漸々(ぜんぜん)に冷あがり、こわわり直(すぐ)になり、唇の色青黒、脈至て沈伏(しずみかくれ)、或は脉なきに至り、口も言うことならず、遂に倒れ無性になるなり 
【用法】
・ 先扶(まずかいほうし)て煖なる室に入、凍人の衣(きもの)を去(ぬが)せ、傍人(かいほうにん)の着せし熱衣(あたたかききもの)に包、米を炒熱くし、或は竈の下の灰を熱く炒り、袋の内へ入れ、病人の胸を熨しあたたむべし、冷えれば換(とりかえ)て幾度もむすべし、扨て(さて)酒と生姜の絞汁等分に和匂(まぜ)、熱くかんして飲しむべし <下巻14丁>
・ 冷極(ひえきわま)りて唇青く、脈なく、陰嚢縮上りたる者、同法にて心頭(むなさき)を先ず熨法を以て温め、臍の中気海關元の穴に十五壮灸すべし、右の法を用て口中気出て後に稀粥清(かゆのとりゆ)を稍々(そろそろ)と灌ぎのませ、又は生姜湯を其間にまじえのましめて、漸くに醒べし <下巻14丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-2. 中諸穀菜毒: 穀類や野菜の毒にあたる
 └ 中菘菜多食毒: 菘菜を多く食して毒に中(あたり)たる
【用法】生姜を多く喫(くらい)て良 <下巻46丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-2. 中諸穀菜毒: 穀類や野菜の毒にあたる
 └ 中竹筍毒: 竹の子の毒に中(あた)れば、腹大(おおい)に緊満(きびしくはり)て、手を近づくべからず
【用法】急に蕎麦の殻を煮、汁を取、多く飲むべし、生姜胡麻亦よく、毒を解す <下巻47丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-2. 中諸穀菜毒
: 穀類や野菜の毒にあたる
 └ 中芋毒: 里芋の毒に中(あたり)たる
【用法】生姜汁を飲てよし <下巻47丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-2. 中諸穀菜毒
: 穀類や野菜の毒にあたる
 └ 閉気慈姑: 慈姑を食して気閉じたる
【用法】生姜其毒を解す <下巻47丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-4. 中魚介禽獣肉毒
: 魚介、禽獣類の肉、他諸毒にあたる
 └ 中鱠毒: 鱠(なます)の毒に中(あたり)たる
【用法】生姜の絞汁を飲てよし <下巻56丁>

8. 臨産急証: 出産に関する急病
└ 8-1. 難産

【疾患注釈】正産(兒の頭正直に出るなり)にして生下(うまれ)かぬるを碍産(がいざん)という、又兒先足を露(あわらす)を逆産とす、又兒先手を露を横産(おうさん)という、又兒母の後(いしき)のかたへ挂(かかり)しを棖後(とうご)という、又兒母の左か右の方へ偏(かたより)、兒の額角(こびんさき)を露(あわらす)を偏産(へんさん)という
【用法】人参末、乳香末一匁、辰砂五分、鶏子(にわとりのたまご)白(しろみ)一枚(ひとつ)、生姜汁を入攪(かきまぜ)て服すべし <下巻72丁>

8. 臨産急証: 出産に関する急病
└ 8-1. 難産

 └ 胞衣不下(えなおりざる): 兒生下時(こうまれるとき)、看生人(かいほうにん)産母の胸前をしかと抱き、産婦も亦自分にて肚腹を緊(きびしく)抱くべし、胞衣下る 
【用法】鹿角末にして、生姜湯にて一二匁を用ゆ <下巻74丁>
 
10. 小児急証: 小児の急病
└ 10-6. 初生口噤不開
: 新生児、口を噤んで開かない
【用法】天南星末一錢(もんめ)許(ばかり)に龍脳少許を入、研匂(すりととのえ)、生姜の絞汁に調(ととのえ)て、指先にて兒の牙齦(はぐき)に擦(すりつけ)べし、立(たちどころ)に開くなり <下巻88丁>
関連情報新訂和漢薬
同類生薬乾姜,炮姜(「備考」参照)
参考文献JP18: 第18改正日本薬局方.
CP2020: 中華人民共和国薬典 (2020年版) .
C1) 和漢薬百科図鑑 Vol. I, pp 116-118.
L1) 官準 広恵済急方.
L2) 近世歴史資料集成第2期 (第9巻) 民間治療(2).
L3) 新訂 和漢薬 pp. 551-553.
備考古来,漢方処方で用いられる生姜は,いわゆる新鮮なショウガのことで,乾姜は乾燥品である.したがって,漢薬市場の乾燥した生姜(乾生姜とも称す)は,漢方でいう乾姜を指す.では市場の乾姜は何かというと,生姜を蒸乾したもので,修治品(加工品)といえる.一方,現在中国では新鮮なものが生姜で,乾燥品が乾姜である.また修治品として炮姜がある.炮姜は先ずきれいな砂(蛤粉,滑石粉)を鍋に入れ,強火で熱した後,乾燥した皮付き生姜を入れて攪拌し,表面が盛り上がって褐色になったら取出し放冷したものである.
生姜は乾姜より健胃,鎮嘔の効果が大である.
生姜の代わりに乾生姜を用いる際には,古方の分量の1/3~1/5が適当である.
更新日2022/11/30