資料館生薬データベース

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生薬名

入手時名称杏仁
正式名称杏仁
日本語読みきょうにん, Kyōnin
現地読みXingren
ラテン名Armeniacae Semen (JP), Armeniacae Semen Amarum (CP)
英語名Apricot Kernel (JP), Bitter Apricot Seed (CP)
薬用部位分類植物性生薬
細分類種子
産地情報中華人民共和国, 河北省承徳
入手先情報日本(ToS), 大阪府, ㈱栃本天海堂(試供品)
入手年月日2020/01/17
蒐集者小松かつ子
TMPW No30476

首都、省都または行政区域代表地点(都道府県庁所在地など)を表示しています。  
40.952942
117.96275000000003
産地情報
中華人民共和国,河北省承徳
https://ethmed.toyama-wakan.net/img/pin_san.png
34.6937249
135.5022535
入手先情報
日本(ToS),大阪府
https://ethmed.toyama-wakan.net/img/pin_nyu.png

学術情報データベース

一般生薬名杏仁, Xingren, Armeniacae Semen (JP18), Armeniacae Semen Amarum (CP2020), Apricot Kernel (JP18), Bitter Apricot Seed (CP2020)
生薬異名苦杏仁, 苦北杏仁, 龍王大南杏仁
生薬画像
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原植物名Prunus armeniaca L.1, Prunus armeniaca L. var. ansu Maxim.2, Prunus sibirica L., ホンアンズ1, アンズ2
原植物画像
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原植物科名Rosaceae, バラ科
薬用部位種子
選品よく肥厚して大粒で,内部が白色のものが良い.外種子を除いて用いる(TN).
公定書日局18,薬典(2020)
臨床応用鎮咳,去痰,利水薬として,喘息,咳,呼吸困難,心下膨満,浮腫,腸燥便秘などに応用する.
医学体系中国医学
伝統医学的薬効分類止咳平喘薬
薬効[性味] 苦,微温;有小毒.
[帰経] 肺、大腸経.
[効能] 降気止咳平喘,潤腸通便.
[主治] 咳嗽気喘,胸満痰多,腸燥便秘に用いる.
成分情報脂質 Lipids
(*C1):
Oleic acidのグリセライド [glyceride]

ペプチド Peptide
(*C1):
Emulsin, 抗炎症性タンパク [protein substance with anti-inflammatory property]

青酸化合物 Cyanogenic compounds
(*C1):
Amygdalin

成分 構造式

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薬理作用解熱,気管平滑筋弛緩,鎮咳,抗炎症,駆虫,殺菌作用.
DNA配列AF185620; 伝統医薬データベース.
証類本草(中国古典)※画像をクリックすると本文の画像が表示されます
適応症喘息, 咳嗽, 呼吸困難, 多痰, 浮腫, 便秘
方剤華蓋散, 加味八脉散, 還魂湯, 橘皮半夏湯, 杏蘇散, 桂枝加厚朴杏仁湯, 桂枝二麻黄一湯, 桂枝麻黄各半湯, 厚朴麻黄湯, 五虎湯, 古今録験続命湯, 紫蘇子湯, 潤腸湯, 潤肺湯, 小青竜合麻杏甘石湯, 小続命湯, 神秘湯, 清肺湯, 続命湯, 大青竜湯, 大続命湯, 治喘一方, 当帰白朮散, 当帰白朮湯, 人参養栄湯 [聖済], 貝母湯, 肺癰湯, 破棺湯, 茯苓杏仁甘草湯, 麻黄湯, 麻黄加朮湯, 麻黄加苓朮附湯, 麻黄連軺赤小豆湯, 麻杏甘石湯, 麻杏薏甘湯, 養肺湯, 苓甘姜味辛夏仁湯, 苓甘姜味辛夏仁黄湯, キョウニン水, 複方キョウニン・キキョウ水
広恵済急方(日本古典) 

Tips!

1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類
└ 1-13. 積気暈倒
: 胸腹の激痛により目をまわす
 └ 疝気衝逆(せんきつきあぐる): 素より陰嚢腫痛事有か又腰少腹(したはら)など拘急(ひきはる)ものこの証あり、又左もなくして忽然(たちまち)起る者あり、其証少腹より胸膈(むなさき)まで衝上(つきあげ)引疼(ひきいたみ)て、前の積気(しゃくき)と同証を見(あらわ)すなり
【用法】小うい香杏仁末にし葱白少々入温酒にて服す <上巻69丁>

2. 卒暴諸証: 突然発症する病
└ 2-11. 卒瘂(そつあ)
: 突然話すことができなくなる
【疾患注釈】人俄に言語(ものいうこと)ならず、聲いでざるなり 
【用法】杏仁三分皮を去、熬(いり)、桂枝一分末にし和(まぜ)、泥のごとくし、無患子程を綿に裹み口中に含み、徐々(そろそろ)嚥下(のみくだす)べし <中巻38丁>

3. 外傷の類: 怪我や蟲獣(むし、けだもの)に咬まれる等の外傷
└ 3-11. 諸獣囓傷
: 獣に噛まれる
 └ 瘈狗囓: 瘈(やまい)犬に囓まれたる
【用法】
・ 急に瘡口(きずぐち)より血を絞り出ること少きは瘡口の四圍を鍼にて刺、血を多く絞出し、次に手のさきならば肘の邉、脚さきならば膝頭より、人に小便をしかけさすべし かわりがわり多くしかくるをよしとす、最其小便瘡口の處へ流かかる様にして洗べし 其あとへ胡桃殻を二つに割、肉を去て、半片の内へ人の糞を填満(つめ)て、傷所へうつむけに掩(おおい)ふせ置、其上へ艾葉を大撚(ひねり)かためて灸すべし 其日百壮灸してよし、艾火柱大なる故、胡桃殻は焼て焦(こが)れ、人糞は乾べし、左あらば幾度も取換て灸すべし、灸の後、杏仁を擂(すり)て、泥のごとくし、べったりと厚塗封(ぬりふうし)、其面を布か木綿の類にて厚つつみ置べし、扨(さて)瘡口より血水など流れ出るをよしとす、翌日、杏仁を去て、又前のごとく灸して後に膽礬を末となし、瘡口へふりかけてつつみ置べし、其後は毎日膽礬を酒にて洗いおとして灸し、灸して後又膽礬を傳(つけ)置事六七日して、血水出止たる時灸を停(やめ)て、膽礬を洗去、再び最前のごとく杏仁を塗てべし
婦人小兒膽礬しみて堪がたくは杏仁を傳(つけ)てよし、葱の白根搗爛(つきくず)して傳(つける)もよしとす <中巻89丁>
・ 内薬は、急に杏仁壹匁、馬銭五分、水二碗入、一碗に煎じて、頻(ひたもの)少しずつ飲(のま)しむべし、多く服すれば煩悶(もがきくる)しむものなり、扨(さて)を搗き搾て汁を取、一杯ずつ五六日に一度ずつ服すべし <中巻89丁>
防風升麻葛根甘草各三分、杏仁一匁五分、水茶椀に二杯を一杯に煎服す、最よし、豺狼(やまいいぬ、おおかみ)に囓(かまれ)たるも、此方よし <中巻90丁>

5. 諸物入九竅: 諸物が身体の竅に入る類
└ 5-7. 諸物入肉
: 棘が刺さる
 └ 物縫鍼刺: 物縫鍼にかぎらず鍼を刺(たて)てぬけざる
【用法】杏仁搗爛(つきくずし)、車の脂に調(ととのえ)て其上に貼べし、鍼自(おのずと)出 <下巻33丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-2. 中諸穀菜毒
: 穀類や野菜の毒にあたる
 └ 中小麥毒: 小麥の毒に中(あたり)たる
【用法】山椒杏仁皆麪(めん)毒を解す <下巻44丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-2. 中諸穀菜毒
: 穀類や野菜の毒にあたる
 └ 中蕎麥毒: 蕎麦の毒に中(あたり)たる
【用法】
・ 過食して腹飽(はらはり)満たるには、杏仁を啖(くらえ)ば即消(じきにへる)なり <下巻45丁>
杏仁を搗て服すべし <下巻46丁>

6. 諸物中毒: 諸毒にあたる類
└ 6-4. 中魚介禽獣肉毒
: 魚介、禽獣類の肉、他諸毒にあたる
 └ 中狗肉毒: 狗肉(いぬのにく)の毒に中(あたり)たる
【用法】急に杏仁一二合皮を去て、研りつぶし、水を入れ和匂(まぜ)て、滓を去て汁を服すべし、血片(こりたるち)下りて癒ゆ、或は山査子を加えて煎じ服す、亦よし、或は杏仁一味煎服してよし <下巻59丁>
関連情報新訂和漢薬
同類生薬 桃仁
参考文献JP18: 第18改正日本薬局方.
CP2020: 中華人民共和国薬典 (2020年版) .
C1) 和漢薬百科図鑑 Vol. I, pp 270-272.
L1) 官準 広恵済急方.
L2) 近世歴史資料集成第2期 (第9巻) 民間治療(2).
L3) 新訂 和漢薬 pp. 366-368.
備考『日本薬局方』では「杏仁」の基源として,ホンアンズ P. armeniaca と変種の アンズ P. armeniaca var. ausu と モウコアンズ P. sibirica L. の種子が規定されているが,『中華人民共和国薬典』では「苦杏仁」の基源としてこれらの他に マンシュウアンズ P. mandshurica (Maxim.) Koehne の種子が規定されている.中国では専ら食用とされる「甜杏仁」を,薬用の「苦杏仁」と分けている.両者は種子の amygdalin の含量に違いがあり,苦杏仁は3~5%, 甜杏仁は0.11%である.この amygdalin は杏仁中に共存している β-glucosidase の emulsin などの作用によって mandelonitrile になり,最終的に benzaldehyde, glucose, hydrocyanic acid を生成する.
「キョウニン水」(杏仁水)はこの benzaldehyde とhydrocyanic acid を主成分とした製剤で,鎮咳,去痰薬とされる.「キョウニン水」は杏仁の脂肪油を除いて水蒸気蒸留を行って製す.
Purunus属で同じように amygdalin(約2%)を含む種子類生薬に「桃仁」がある.杏仁は上焦に用い,行気及び水を巡らす作用があり,気滞を伴う便秘に用いるのに対し,桃仁は下焦に用い行血作用があり,血瘀を伴う便秘に用いる.
更新日2021/09/27