資料館生薬データベース
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学術情報データベース
一般生薬名 | 木香, Muxiang, Saussureae Radix (JP18), Aucklandiae Radix (CP2020), Saussurea Root (JP18), Common Aucklandia Root (CP2020) | ||||||
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生薬異名 | 唐木香, インド木香, 広木香, 雲木香, 老木香 | ||||||
生薬画像 |
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原植物名 | Saussurea lappa Clarke (= Aucklandia lappa Decne.) | ||||||
原植物画像 |
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原植物科名 | Compositae, キク科 | ||||||
薬用部位 | 根 | ||||||
選品 | よく肥大し,内部の充実した香りの強いものが良品 (TN). | ||||||
公定書 | 日局18,薬典(2020) | ||||||
臨床応用 | 健胃,整腸薬として,嘔吐,腹痛,下痢,消化不良,寄生虫病などに応用する.薫香料にも用いられる. | ||||||
医学体系 | 中国医学 | ||||||
伝統医学的薬効 | 分類 | 理気薬 | |||||
薬効 | [性味] 辛、苦,温. [帰経] 脾、胃、大腸、三焦、胆経. [効能] 行気止痛,健脾消食. [主治] 胸脇、脘腹張痛,瀉痢後重,食積不消,不思飲食に用いる. | ||||||
成分情報 | 脂質 Lipids (*C1): Aplotaxene セスキテルペノイド Sesquiterpenoids (*C1-C4): alpha-Ionone, Dehydrocostus lactone, Saussurea lactone, Costunolide, Dihydrocostunolide, alpha-Costol, beta-Costol, gamma-Costol, beta-Costic acid, beta-Cyclocostunolide, Alantolactone, Isoalantolactone, Isodehydrocostus lactone, Isozaluzanin C, Mokkolactone, Saussureal トリテルペノイド Triterpenoids (*C1): Betulin ステロール Sterols (*C1): Stigmasterol | ||||||
成分 構造式 |
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薬理作用 | 抗菌作用(精油成分:連鎖球菌,ブドウ球菌),気管拡張,平滑筋弛緩作用 (saussurine). | ||||||
証類本草(中国古典) | ※画像をクリックすると本文の画像が表示されます | ||||||
適応症 | 腹満, 腹痛, 悪心, 嘔吐, 便秘, 下痢, テネスムス, 消化不良, 食欲不振 | ||||||
方剤 | 烏苓通気湯, 加減小柴胡湯, 加味帰脾湯, 桔梗湯[外台], 帰脾湯, 芎帰補中湯, 九味檳榔湯, 香朴湯, 行和芍薬湯, 牛膝散, 三生飲, 七味白朮湯, 実脾湯, 芍薬湯, 十六味流気飲, 椒梅湯, 参蘇飲, 喘四君子湯, 銭氏白朮散, 中正湯, 丁香柿蔕湯, 導水茯苓湯, 導滯通経湯, 内疎黄連湯, 女神散, 肺疳方, 貝母湯, 分消湯, 防已散, 防已湯, 牡丹皮散, 本方芍薬湯, 弄玉湯, 香砂養胃湯 | ||||||
広恵済急方(日本古典) Tips! | 1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類 └ 1-1. 中風: 気を失い半身・手脚きかず、目・口ゆがむ病態 閉証(実証)と脱証(虚証)の二証がある └ 閉証(実証)病状: 卒に倒れ、気を失い、人をしらず、歯を食いしめ、拳を握り、痰を吐くように喘息し、眼口歪み、半身不随、眼を見つめ、或は上目遣いでいるのは中風の閉証である 【疾患注釈】痰壅不省: 痰が塞がっていて正気ではない状態 【用法】天南星、木香とともに等分を刻んで水から煎じて服用してもよし <上巻4丁> 1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類 └ 1-4. 中気: 気が塞がり倒れる 【疾患注釈】此証大抵中風の閉証と同じければ、前の中風の所と合せ見るべし、然ながら中風は身温也 中気は身冷(すず)し、脈も又中風は浮也、中気は沈也 大抵此証の起る前に心気を労し、又は大きに怒事あり、或は怒をこらえ又は思案することありて気の鬱(こり)し時に発する証なり、元皆七情の過極(すききわま)りたるより起る、世に中気中風を一つに心會(こころえ)たる人多し、初は大抵理法も似たる様なれども、後に至りては大に同じからず 【用法】木香壱匁煎じて飲(のま)しむべし <上巻24丁> 1. 卒倒の類: 人俄に倒れる病の類 └ 1-13. 積気暈倒: 胸腹の激痛により目をまわす 【疾患注釈】此証初発に頭痛身熱、或は憎寒(さむけして)、後に大に熱を発し、小腹(したばら)痛を作(なし)て、胸を脇肋(わきばら)に引疼(ひきいたみ)、甚しきは咬牙(きばをかみ)ふるえて反張(そりかえり)、冷汗出て流るるがごとくにして死なんとするあり、又咬牙(きばをかみ)反張(そりかえり)なくして卒然(にわか)に暈(めくるめく)倒るるものあり、或は大小便閉るあり、又積気厥逆(つきあげ)て、心腹(むねはら)共に膨張(はりつめ)て、背膂(せなかかた)引痛、嘔吐乾嘔(はきけえたき)、或は痰沫を吐き、或は心胸(むねさき)に湊(つきつめ)、或は脇肋(わきばら)へ筑(さしこみ)て腹中刺がごとく痛、或はついに厥逆(てあしひえ)あがり、死せんとするものあり 【用法】 ・ 木香末とし熱酒にて調(まぜ)服す <上巻68丁> ・ 紫蘇の葉水にて煎じ服す、急なる時は熱湯にて擺出(ふりだ)し用ゆ、木香末少許(ばかり)入て良 <上巻68丁> 2. 卒暴諸証: 突然発症する病 └ 2-9. 心腹卒痛: 心腹(むねはら)突然痛くなる └ 寒痛: 綿々(だらだら)といつまでも斷間(たえま)なく痛み、胸すきて飢がごとく、按(おし)て快(こころよ)く、大便泄痢或は下重(いけみ)あるは寒痛なり、俗に冷蟲と言 此証最灸して良、中脘、天枢、気海、見許(みはから)い、灸すべし 【用法】木香末となし、温水(さゆ)に送り下すべし <中巻33丁> | ||||||
関連情報 | 新訂和漢薬 | ||||||
同類生薬 | 青木香,川木香,土木香,蔵木香 | ||||||
参考文献 | JP18: 第18改正日本薬局方. CP2020: 中華人民共和国薬典 (2020年版) . C1) 和漢薬百科図鑑 Vol. I, pp 40-42. C2) Chem. Pharm. Bull., 12, 632 (1964). C3) Tetrahedron, 13, 319 (1961). C4) Phytochemistry, 31, 336 (1992). L1) 官準 広恵済急方 L2) 近世歴史資料集成第2期 (第9巻) 民間治療(2) L3) 新訂 和漢薬 | ||||||
備考 | キク科/Compositae の Saussurea lappa Clarke (= Aucklandia lappa) の根に由来する木香が正品で,古代には「青木香」と称した.現在の青木香は,ウマノスズクサ科/Aristolochiaceae の ウマノスズクサ Aristolochia debilis Sieb. et Zucc. および マルバウマノスズクサ Aristolochia contorta Bunge の根である. 川木香はキク科の Vladimiria souliei (Franch.) Ling の根で,通常根頭部を焼いて調製する.かつてこれを Inula racemosa Hook.f.(蔵木香)に充てたことがあったが誤りである. 土木香はキク科のオオグルマ Inula helenium L. の根である.その他中国市場の「越西木香」は Vladimiria denticulata Ling の根である. | ||||||
更新日 | 2023/01/23 | ||||||